環境振動が少ない快適なビルを設計、面倒な3次元データの入力はBIMで自動化BIM/CAD

吹きつける風や近くを走る自動車の影響によって、ビルには微小な振動が日常的に発生する。内部の居住性を損ねるほか、精密機器に影響を及ぼす可能性もある。大成建設は環境振動の予測評価を短時間に高精度で実施できるように、解析に必要な3次元データの自動作成ツールを開発した。

» 2016年06月28日 06時00分 公開
[石田雅也BUILT]

 大成建設が環境振動を解析するために独自に開発したツールは「T-BIM Vibration」である。建築物の3次元データを一元的に管理できるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)を活用する。BIMを使うと設計から施工、維持管理まで建築業務の全般にわたって、建物を構成する部材の情報を共通に利用できるメリットがある。

 「T-BIM Vibration」は設計の段階でBIMに登録したデータをもとに、建物の内部で日常的に発生する環境振動を予測評価するためのツールだ。環境振動は風などの自然現象のほか、建物の内外にある機械や車両によっても発生する。振動の様子を予測するためには、建物を構成する部材の形状や材料のデータをコンピュータシステムに入力して、有限要素法による解析モデルでシミュレーションを実行する必要がある(図1)。

図1 「T-BIM Vibration」による環境振動解析モデルの作成手順。出典:大成建設

 従来はCAD(コンピュータ支援設計)システムのデータや仕様書に記載した情報をもとに、手作業で3次元データを入力して解析モデルを作成していた。標準的な建物の1フロア分の解析モデルを作成するには、1人のエンジニアで2〜3日間かかってしまう。このデータ入力を「T-BIM Vibration」で自動化すると半日程度で作業が完了する。

 しかも部材の情報を3次元のソリッドモデルでBIMに登録しておけば、部材ごとの複雑な形状を正確に把握して解析できるため、環境振動の予測評価を高い精度で実行することが可能だ(図2)。ビルを建設する前に環境振動を予測評価した結果、振動による問題が懸念される場合には、設計を変更して再検討する作業を短期間のうちに実施できる。

図2 「T-BIM Vibration」で作成した環境振動解析モデルの例。出典:大成建設

 大成建設は大規模なビルや複雑な形状の建物の環境振動を予測評価するのに「T-BIM Vibration」を利用する計画だ。そのほかのビルでも環境振動の心配があるケースに優先的に活用して、耐振動性能の高い建物を低コストで建設できるように提案していく。3次元データで建設業務の効率を改善するBIMの導入メリットの1つになる。

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