災害時に必要なのは“情報収集力” 1000km飛行のVTOLドローンを開発したテラ・ラボの「災害対策DX」Japan Drone 2024(1/2 ページ)

気候変動や脆弱な都市インフラを背景に、世界規模で自然災害による被害が拡大している。日本では国土強靱化基本法を制定し、国や地方自治体で防災/減災の対策が講じられている。テラ・ラボはこうした状況を踏まえ、「広域災害情報支援システム」の構築を目指すベンチャー企業だ。

» 2024年08月26日 08時22分 公開
[川本鉄馬BUILT]

 テラ・ラボは「Japan Drone 2024」(会期:2024年6月5〜7日、幕張メッセ)で、災害対策を中心に無人航空機と活動内容を紹介した。

 テラ・ラボが研究の核にしているのは、長距離の無人航空機を活用したシステムだ。今回のJapan Drone 2024では、システムを構成する広いブースに翼長8000ミリの大型モックアップ1機と翼長4300ミリの試作モデル3機、地上支援システム(車両型)を展示した。

震災後の情報をどのように地図システムに落とし込むか

 テラ・ラボは中部大学発のベンチャーとして2014年3月に設立。本社は愛知県春日井市にあり、福島県南相馬市でドローンの格納庫と工場、研究施設の「TERRA LABO Fukushima」を運用している。今展では、ブース内でテラ・ラボの設立経緯や活動内容などを代表取締役 松浦孝英氏がプレゼンテーションした。

ブースでプレゼンしたテラ・ラボ社長の松浦孝英氏。手を添えるのが垂直離着陸(VTOL)する「テラ・ドルフィン VTOL」 ブースでプレゼンしたテラ・ラボ社長の松浦孝英氏。手を添えるのが垂直離着陸(VTOL)する「テラ・ドルフィン VTOL」 写真は全て筆者撮影

 テラ・ラボの創業は、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」が契機になっている。テラ・ラボの社長を務める松浦氏は大学職員だった2011年当時、テレビなどで報じられる情報からは被災地で何が起きているのかが分からず、気が気でなかったという。

 地震発生後は情報が錯綜し、行政や警察などから発信する情報とテレビや新聞などとの報道に乖離(かいり)がみられた。そこで松浦氏は現地の正確な情報を収集し、正しく伝えるためのシステムが必要と考えた。具体的には、避難所や医療拠点、輸送路、鉄道の運行状況などを地図上で可視化するシステムだ。

 そのため、テラ・ラボは、衛星やドローンからの画像を用い、現場の情報を地図上に表示する研究に取り組んできた。ただ、衛星は災害時に発生地点の上空にいるとは限らず、ドローンは局所的な情報にはフォーカスできるが、広域の情報を収集するには向いていないという課題があった。

 テラ・ラボが“固定翼タイプ”のドローンを開発するのは、こうした理由からだ。飛行機のような固定翼タイプのドローンであれば、広いエリアを飛行して多くの情報を収集できる。また、無人化した機体を多数飛行させれば、それだけ有効なデータが得られる。

テラ・ラボは、広範囲の情報を素早く取得するため、固定翼機を採用した テラ・ラボは、広範囲の情報を素早く取得するため、固定翼機を採用した

 テラ・ラボは、ドローンから取得した情報を整理し、情報共有する施設として、福島県南相馬市の滑走路を備えたドローン試験場「福島ロボットテストフィールド」で、TERRA LABO Fukushimaを2021年11月から稼働している。公的研究開発支援制度の「SBIR」を積極的に活用し、ドローンの試作から、製造、メンテナンス、情報の解析/情報共有、被災時の意思決定支援までの機能を併せ持つ拠点だ。

「TERRA LABO Fukushima」の外観。横幅60メートル、奥行き20メートルの施設で、災害情報の収集と解析、情報公開なども担う 「TERRA LABO Fukushima」の外観。横幅60メートル、奥行き20メートルの施設で、災害情報の収集と解析、情報公開なども担う
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