衛星を使って河川堤防や港湾などのインフラ変位をモニタリングするJAXAのツールが商業利用の段階に一歩前進した。2019年8月から事業化できる民間企業を募集しており、このほど中日本航空とSynspectiveが選ばれ、商用利用に向けて大きく前進した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、衛星SARデータによるインフラ変位監視ツール「ANATIS(Automated Nationwide Application of Timeseries InSar:アナティス)」の商用利用事業者に、中日本航空とSynspectiveを選出し、知的財産許諾契約を締結した。事業者による事業準備が整い次第、ANATISを利活用したソリューションサービスが提供される。
ANATISは、三菱電機が設計・製造した陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)の観測データからインフラの変位を自動で解析する。そのため、衛星に関する専門知識が無くても、衛星データを利用したインフラのモニタリングが可能となる。
だいち2号には、Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)という観測装置が搭載され、 人工衛星から地表に向けて電波を照射し、反射された電波を受信して観測。地殻変動や災害時の被災状況以外にも、住友林業のインドネシアでの植林事業で森林分布の把握にも活用されている。だいち2号の観測幅は50キロで、日本国内は年間4回ほど定期的に観測しているという。
変位の計測精度は、最小メッシュが3メートル四方で、ミリオーダーでの要望に応えられる。OSはWindowsで、5時間以内で解析が完了する。
JAXAでは、ANATIS開発にあたり、インフラの予防保全を実現することで、維持管理コストを低減させることを主眼に置き、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業(2014〜2018年度)の成果を一部活用した。
また、2019年9月には、河川堤防、港湾、空港を対象にインフラ変位を高精度に検出する技術として、総務大臣賞「インフラメンテナンス大賞」を受賞している。
JAXAは、ANATISを社会に普及させていくためには民間企業の知見やノウハウが必要として、今後も事業者の公募は継続させる方針を示している。
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