“KAPシステム”と“Revit”の一体化、鉄骨の建築生産プロセスをリアルタイム共有Autodesk University Japan 2018(1/2 ページ)

清水建設は、鉄骨構造物専用CAD「KAPシステム」の活用により、年間の鉄骨使用量の事前割り出しを高い精度で実現している。自社でKAPシステムの強化も図り、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」と一体化することで、鉄骨に関わる全関係者とリアルタイムでの情報共有も達成した。

» 2018年09月27日 06時00分 公開

 オートデスクは2018年8月31日、建築・土木などのユーザー事例や最新ソリューションを紹介するセミナーイベント「Autodesk University Japan 2018」をグランドニッコー東京 台場で開催した。

 イベントでは清水建設が、鉄骨生産プロセスの情報管理における“ワンデータ化”をキーワードとする「KAPシステムのRevit一体化による建築生産プロセス改革」をテーマに講演した。登壇者は、生産技術本部 BIM推進部の三戸景資部長。

プラットフォームを1つに統合し、リアルタイムに情報共有

清水建設 生産技術本部 BIM推進部の三戸景資部長

三戸 当社は、2011年1月よりBIM(Building Information Modeling)の取り組みを後発ながらスタート。当時、図面と一致しない3Dデータに意味は無く、BIMから図面・施工図・設計図を出力するような仕組みの構築が必要と考えた。その取り組みを続ける中、最近ではBIMの活用とは、デジタルデータによる業務推進で情報の共有や整理を効率化することにあると認識している。すなわち、図面はデータの正当性を担保するもの。いずれにしても、図面とBIMのデータは一致しなければならない。

 “Open BIM”という考えは、分業化が進む建築産業ではソフトウェア間の互換性を確保する必要性から重要である。だが、共有可能な拡張子であるIFC(Industry Foundation Classes)は、納品物や確認申請用のストックデータとしては優れているものの、実際に扱うBIMは常に変わっていくフローデータ。各部署や外注先が作成したIFCデータによって整合調整を図った場合、最新のものは誰が持っているのかが曖昧になってしまう。

“ワンデータ”の構想イメージ

三戸 では、理想のワークフローとは何か。それが、“ワンデータ”という考え方。1つのプラットフォームに統合することで、リアルタイムに情報の干渉もなく共有できる仕組みを構築すべく、「KAP システム」(鉄骨構造物専用CAD/CAMシステム)の強化に至った。

 従来、鉄骨専用CADはゼネコン各社が仕様を定めて、専用CADベンダーは個別に対応してきた。これにより、会社によって仕様・要求内容が異なるため、設備業者間で互換性が無い。

 こうなると、専門工事業者からすれば、中間ファイルが乱立してBIMは手間ばかりでメリットがないという認識に陥る。これは鉄骨だけの話ではなく、現場の下請け業者はゼネコンごとに部材を用意しているため、他の部材にもいえる課題だ。

 そもそもBIMの目的は、建築の生産プロセスをデジタル化して生産性の向上を図ることだが、気が付くとバラバラの仕様が乱立しているのが現状。その構造中間ファイルの共通仕様化にIFCデータを用いることが果たして正しいのかという疑問がある。中間ファイル形式だけではなく、本当は単純にファイル形式を1つに統一すれば済むことである。

左から鉄骨専用CADの実態、BIMと鉄骨専用CADの連携
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