立命館が開発した建設向けウェアラブルIoTシステム(2/2 ページ)

» 2018年06月26日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]
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滞留箇所の特定や個人属性の傾向を分析

立命館・児玉氏

 IoTシステムの開発では、生体情報の分析を立命館大学テクノロジーマネジメント研究科准教授・児玉耕太氏、行動分析を東京理科大学理工学部経営工学科講師・小林和博氏がそれぞれ担当した。

 児玉氏は開発の背景について、「建設現場では熟練作業者が減少する一方、不慣れな作業員が現場に増え、事故が起きやすくなってきている。2016年厚生労働省の調査では、作業中の熱中症は約3割が建設業が占めている」と指摘。「人手不足の業界で、現場における生産性向上と安全性の低下を改善することは、喫緊の課題となっている」と説明した。

 また、民間企業が進めているスマートウェアの活用との違いを「研究テーマがライフサイエンスとスタートアップなので、将来的なビジネス化も視野に入れてはいるが、アカデミーの立場として、研究成果を生データを含めて論文で発表することに意義がある」と語った。

体調管理だけでなく、導線解析で生産性向上も図る

 作業効率の向上については、小林氏が説明。位置情報の取得方法は、Wi-Fiアクセスポイントで作業者が持つ機器の電波強弱を受信し、計算から位置を推定する。このデータと心拍数をクラウドサーバに保存して解析にかけ、行動の最適化を図る。

東京理科大・小林氏

 行動の最適化について、小林氏は「蓄積した作業導線から、滞留箇所や体調変化の傾向を特定し、翌期以降の作業レイアウトの配置や作業計画に反映させて改善する。実際に実証段階では、作業者や現場監督へのアンケートでデータの裏付けを取る必要がある」と解説した。

 実証実験が行われる工事は、熊谷組が施工する大阪市内の「雨水滞水池築造工事」の足場撤去作業。2018年5月に児玉氏らは現地入りして、1度モニタリングテストを行っている。6月29日には、実験に同意した7人の作業員がスマートウェアを着用して、生データを取得する。

 児玉氏は、「2018年中には2〜3回実証実験を行う予定だ。その後、システム・解析方法をブラッシュアップしていきたい」と今後の方向性を示した。

2018年5月に児玉氏らによるモニタリング
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