国内のプリンタメーカー6社が、大判インクジェットプリンターの検討部会を立ち上げた。今後は、作業環境の安全性やカタログに記載するスペックの標準化を検討していく。対象とする出力物の分野は、CAD/GIS、POP、サイン・ディスプレイ、テキスタイルで、機種は17インチ以上のインクジェットプリンタが対象となる。
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)は2018年4月10日、国内のプリンタメーカー6社で構成する「大判インクジェットプリンタ部会」を4月1日に設立したと発表した。大判インクジェットプリンタメーカーの団体組織としては国内初となる。参加企業は沖電気工業、キヤノン、コニカミノルタ、セイコーエプソン、ブラザー工業、リコー。
部会内には、使用環境の安全性を検討する「環境・安全性分科会」と、カタログに記載する基本仕様の標準化を議論する「基本仕様記載項目標準化分科会」を設置。環境・安全性分科会では、印刷した成果物のシックハウス対策などといった環境配慮ではなく、労働者の作業安全に関する基準の検討などを想定している。
スペックの標準化では、保証項目(重量、サイズ、規格など)と参考値(条件付で記載される項目、例えば生産性など)、各社独自の項目(技術的なアピール項目など)に分けて検討を進める。
同部会が対象とする分野は、建設や設計の現場で線画中心の図面や地図などを水性機でプリントする「CAD/GIS」、屋内のPOP・写真・ポスターの出力で主に水性インクを使う「グラフィックス」、屋外広告を対象に溶剤系・UV・レジンなどで印刷する「サイネージ」(Latexも対象)、捺染方式または転写方式で布メディアに直接印刷する「テキスタイル」。大判インクジェットプリンタ(IJP)については、用紙幅17インチ(432mm、A2ノビ)以上と定義。テキスタイル分野で、Tシャツをダイレクトに印刷するガーメントプリンタのみ、17インチ以下を含む。
同部会の設立趣旨についてJBMIAは、「大判インクジェットプリンタに関する会員企業共通の困りごとを抽出し、課題解決を目指すための恒久的な組織を立ち上げた」とコメント。背景には、協会のドメイン拡大に取り組む上で、協会の趣旨である「ビジネス機械・情報システム産業の事業領域」であること、「成長領域の事業」であることの2つの観点で検討した結果、大判インクジェットプリンタが対象品目としてふさわしいという結論になったという。
JBMIAでは、2017年の大判インクジェットプリンタ(17インチ以上、ガーメントは17インチ以下も含む)市場の全世界出荷金額を約3964億円規模になると予測する。要因として、単価の安い屋内向けポスターや写真出力用途の「水性商品」の市場は減少し、サイン・テキスタイル向けは増加傾向にあると指摘。インクはソルベントからUVにシフトし、市場全体で約3%の成長が続き、2020年には4378億円にまで拡大すると見込んでいる。
これまでの設立に向けた動きとしては、2017年1月に「大判プリンタ品目追加検討会」を立ち上げ、同年10月に設立準備委員会を設置。検討を重ね、2018年3月7日に部会の設立が承認された。
JBMIAによると、「現時点では、ヘッドやインクの競争領域となる部分は検討の対象外とする。今後は、まずは国内のメーカーから参加を募り、月1回2〜3時間程度の部会を開催していく予定だ」としている。
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