NECなどは透過性の強い宇宙線を用いることで、火山などの自然構造体や道路、鉄道など大型建造物の地中埋没部分を監視できる「ミュオグラフィ」測定システムの開発を開始した。
NECは2017年5月、東京大学地震研究所とハンガリー科学アカデミー・ウィグナー物理学研究センターと「ミュオグラフィ」測定システムの共同開発を開始すると発表した。ミュオグラフィとは透過性の強い宇宙線「ミューオン」を用いた、火山などの巨大物体内部を透視するレントゲン写真のような可視化技術である。火山などの自然構造体や、道路、鉄道、橋梁など大型建造物の地中埋没部分の監視などに活用できるという。
ミュオグラフィはこれまでにも火山やピラミッドの内部調査や鉱床探査などに活用されてきたが、雑音などの環境要因や機器サイズ、コスト面で非破壊検査でのセンサーとして用いることが困難だった。しかし近年では、機器の小型化や高精度化などの技術革新と、その技術検証ノウハウの蓄積により、実用化が進められている。
東京大学は効率よくミューオンのみの到来位置、方向情報を収集するミュオグラフィ装置を構築する。放射線シールドやミューオン検出器、筐体などで構成される複合体だ。
ハンガリー科学アカデミーは、透視画像の解像度を左右するミューオン検出器を開発する。従来使用していたミューオン検出器は振動や温度変化に弱く、野外で高い解像度で測定を行うには不向きだった。今回それらの課題をハンガリー科学アカデミーのMWPC(Multi Wire Proportional Chamber)技術で解決し、高精度化を実現した。
NECはミュオグラフィ技術で取得される構造物情報のデータ取得や解析、AI技術「NEC the WISE」を取り入れた社会インフラ状態センシングシステムの検討を行う。
これら3者の取り組みにより、従来は観測が困難だった埋設物や山体内部などの構造体を見える化する。収集した構造物データは、NEC独自の画像処理を含むAI技術や既存のシステムと連携し、危険事象の予測や事前対処といった技術開発も推進するとした。
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