ビルの省エネやヒートアイランド現象の緩和に効果がある壁面緑化。一方、システムの複雑さや維持管理に手間がかかるといった課題もある。中国電力と大成建設は、こうしたコストを削減する新しい方式の緑化システムを開発し、広島県で実証試験を開始した。
中国電力は2016年10月21日、同日から大成建設と共同開発を進める循環式養液栽培方式を利用した新しい壁面緑化システムの実証試験を開始したと発表した。広島県南区の「宇品天然温泉ほの湯」で行うもので、新システムの動作や植栽の生育状況の確認などを行い、実用性の評価を行う。実証は2018年3月まで行う予定だ(図1)。
緑化システムは夏場に受ける太陽熱を植栽が吸収し、建物の温度上昇を抑えることで冷房効率を上げることができる、建物の省エネルギー効果や都市部でのヒートアイランド現象の緩和が期待できる。その一方で緑化システムの一部として肥料を水に溶かした培養液のタンクを設置する場合、タンクと培地槽を配管でつなぐ必要があり、システム構成が複雑になる傾向がある。さらに植栽後の良好な生育状況や美観を長く維持するためには施肥や水やりなど、細やかな管理が必要という課題もある。
両社が共同開発を進めている壁面緑化システムはこうした課題を踏まえたもので、植物を定植している培地槽と培養液槽を上下二層構造の一体方式として設置するのが特徴だ。これにより従来培地槽と培養液タンクをつないでいた配管構成を簡素化でき、コンパクトかつ軽量なシステムになる。従来の壁面緑化システムと比べて清掃などのメンテナンスが容易で、システム同士の連結による緑化面積の拡大も行いやすくなるメリットがあるという。さらに循環式の養液栽培方式を採用しており、肥料成分を含む培養液が植物にむらなく自動的に散布され、植物の生育に適した条件を維持しやすいとしている(図2)。
同システムではプランター型の栽培槽の上部に登はん材を垂直に設置し、そこへつる性植物を立体的に繁茂させ、緑化を図る。今回の実証では年間を通して常緑であり、耐暑性や耐寒性など環境ストレス耐性に優れるビナンカズラを採用した。今後は植栽後の維持管理技術などの実用性評価を進めるとともに、同システムの適用・応用先の拡大検討も進めていく方針だ。
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