電力システム改革や再生可能エネルギーによる分散型エネルギーシステムなど電力を取り巻く環境は大きな変化を迎えている。しかし、その一方で停滞しているとみられるのが使用電力の削減である。ただ、国際的な地球温暖化対策への要求が高まる他、各種規制もさらなる強まりを見せる中で「省エネ技術」のさらなる進歩は必須となりつつある。
2015年12月にフランス・パリで開催された国際気候変動枠組み条約第21回締結国会議(COP21)では、京都議定書に代わる温室効果ガス削減のための新たな国際枠組みとして、パリ協定が採択された。これにより世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えることが共通目標として掲げられることになった。現在のまま、特に対策を行わずに進むと気温上昇は4度になると見られているため、さまざまな対策が必要になることが分かる。
そのための目標として21世紀後半には世界全体の温室効果ガス排出量を生態系が吸収できる範囲に収めるという目標が掲げられた。さらに、参加各国は2020年以降、5年ごとに目標を見直し、提出していくことが必要となる。日本は既に2030年度の削減目標について2015年7月に「日本の約束草案」を発表している(2030年度までに2013年度比で温室効果ガスを26%削減、関連記事)が、あらためて2016年春までに地球温暖化対策計画を策定する方針を示す。国際世論的にも温室効果ガス削減は、必須の取り組みになっているといえる。
温室効果ガス削減に向け、特に重要になると見られているのが、使用エネルギーの削減である。しかし、日本では現実的にはエネルギー使用量の削減が想定したほどは進んでいないという現状がある。例えば、エネルギー起源の二酸化炭素排出量を、政府が基準年とおいた、2005年度と2013年度で比較すると、2013年度は12億3500万トンとなり2005年度の12億1900万トンよりも増えている。製造業などの産業部門や運輸部門、電力などのエネルギー転換部門などは減少しているが、業務その他部門と仮定部門が大きく増加しているためだ(図1)。
エネルギーそのもので見た場合でも、ピークとなった2004年度と比較すると減少傾向にはあるものの、ここ数年は大きくさせることができていない現状が続いているといえる(図2)。
省エネルギ―関連技術は、1970年代の石油ショックを契機に、日本では研究開発が盛んになった。特に製造業を中心に、省エネルギーでの生産・開発の実施や、省エネルギー製品の展開が進み、「エネルギーを使わずに経済成長を遂げる」ということを実現してきた。実質GDP当たりエネルギー消費の主要国比較を見ると、現在でもエネルギー利用効率が高いということが分かる。しかし、1990年代後半までは圧倒的な1位だった状況に対し、欧州各国がエネルギー利用効率を高められているのに対し、日本はそれほど同数値を下げられていないという状況がある(図3)。
2012年の数値を見ても、日本は英国に次いで2位だが、欧州の各国とはほとんど変わらない数値となっており、省エネルギー技術の国際競争力という面でも衰えが目立つ状況だといえそうだ(図4)。
これらの国際的な状況を背景に、あらためて日本でも省エネに対する取り組みを強化する動きが目立っている。その1つがZEBやZEHに対する「省エネ」目標の設置だ。
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