電気設備設計の暗黙知をAIで自動化、関電工×Arentの自動設計システム:設備設計BIM(1/2 ページ)

関電工とArentは、BIMデータを基に電気設備の概算や設計を自動化する独自システム「VOLDAR」の運用を開始した。熟練者の暗黙知をロジック化し、これまで数週間を要していた図面作成を1時間に短縮する。

» 2026年10月08日 12時31分 公開
[坂入太陽,BUILT]

 総合設備業の関電工とArent(アレント)は2026年8月25日、両社が共同開発した電気設備自動設計システム「VOLDAR(ヴォルダー)」の運用開始を発表した。同日開催した説明会では、DX戦略を掲げる関電工の中期経営計画やBIMの基礎知識を説明した上で、VOLDARのデモンストレーションでBIMモデルから幹線設備の図面や計算書を自動生成してみせた。従来、複数人で数週間を要していた概算用の幹線根拠図面が、1人かつ1時間程度まで短縮できる画期的な設備設計のBIMツールといえる。

概算業務の属人化と長時間作業を解消へ

 電気設備設計は、設備容量の算定、幹線計画、各種図面の作成、法令基準の確認など業務が多岐にわたり、設計者の経験やノウハウに依存しているのが現状だ。設計品質のばらつきや作業負荷の増大、熟練設計者の技術や判断基準といった“暗黙知”を次世代へ継承できないなどの課題を抱えている。

 特に設計者の技術に依存されがちなのが、電気設備工事費の「概算業務」だ。設計者が経験をもとに、イチから根拠図を作成し、そこで提示した概算金額がそのまま工事予算枠となるケースも多い。そのため、人によって金額の精度や算出根拠にばらつきが生じてしまい、若手とベテランの間で手戻りを繰り返すなど、作成に2〜3週間を要することも珍しくなかった。VOLDARは、こうした電気設備設計の課題を解決する目的で開発した電気設備自動設計システムだ。

「VOLDAR」の導入で、作業効率の向上はもちろん、設計品質の均一化も見込める 「VOLDAR」の導入で、作業効率の向上はもちろん、設計品質の均一化も見込める 提供:Arent

関電工の中期経営計画に明記されたDX推進の中身

 説明会に登壇したのは、関電工 執行役員 営業統轄本部 コストエンジニアリングユニット長 岡田武氏と、営業統轄本部 エンジニアリング部長 谷口大輔氏、Arent 代表取締役社長 鴨林広軌氏の3人。冒頭で岡田氏は、「建築業界が直面する構造的な課題に、当社はDXで正面から取り組んでいる。その中核的な成果の1つがVOLDARだ」と語った。

 関電工グループの中期経営計画(2024〜2026年度)には、「さらにかわる。より豊かな未来をつくる」をスローガンに掲げ、2030年に向けて全業務のデジタル化と経営情報統合基盤の確立を目指すと明記した。DX分野では、「プロセス改革と商品化」「AIと効率化」「見える化と意思決定の高度化」「先進技術と収益化」の4つを重点項目に定めている。

 Arentの鴨林氏は、BIMの基本を改めておさらいし、従来のCADや3Dモデルが図面のデジタル化にとどまるのに対し、「壁、柱、設備といったパーツ(オブジェクト)それぞれに素材、価格、寸法などの情報を記録して、関係者全員で共有できるのは、BIMだからこその強みだ」と説明。その一方で、「国内のBIM活用は決して順調ではない」とも指摘した。

 Arent独自のアンケート結果では、BIM活用を実感している割合が高かったのは、「顧客へのプレゼンテーション」で、86.6%は期待以上または予想通りの成果と回答した。しかし、業務効率化や業務フローの改善による生産性向上では、好意的な意見はわずか43.0%にとどまった。設計段階での手作業のデータ入力がかえって負担となり、入力後のデータもその後に生かされていないため、導入効果を実感できていない傾向にあると分かった。

現場目線でのBIMの活用満足度を調査したアンケート結果 現場目線でのBIMの活用満足度を調査したアンケート結果 提供:Arent

設計者の暗黙知をシステム化した電気設備の自動設計システム「VOLDAR」

 こうした建築設備やBIMを取り巻く状況を受け、概算業務や設計段階の入力を自動化し、その次のプロセスの施工や維持管理でもデータを活用できるようにしたのが、VOLDARだ。開発に当たっては、関電工が長年培ってきた技術計算や計画、法規格など電気設備設計の知識とデータを提供した。そのため、関電工が長年積み重ねてきた過去の設計ノウハウやプロジェクト実績を組み込んだ設計ロジックに基づき設計を処理する「関電工仕様」のシステムとなっている。

「VOLDAR」の概要 「VOLDAR」の概要。BIMと関電工の設計ロジックを融合し、電気設備設計の各種図面や計算書などを自動生成する 提供:Arent

 谷口氏は、「従来の設計者は機器や配線の記載がない『白図』から設計図を書いており、盤の位置や幹線ルートづくりなどは、個人のノウハウに依存していた。その『暗黙知』となっている自分たちの独自技術をロジックに落とし込む作業が最も難しかった」と振り返った。

 その部分を補うシステム実装を担ったのが、BIMの自動化技術や自動ルーティング技術など、建設DX分野で豊富な開発実績を有するArentだった。

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