建材開発を加速させるアルテアのDXソリューション LIXILはどう活用しているのか?数値解析技術で広がる設計手法

LIXILは、高い機能と意匠性に優れた製品とサービスを手掛けることで知られる日本有数の住宅設備・建材メーカー。同社では、高品質の製品を作るため、アルテアエンジニアリングの解析ソリューションを採用。さらに、クラウド上で各種のソフトウェアを効率的に利用するための環境を整備している。そこで注目されたのが、「Altair PBS Professional」と「Altair Access」といったサーバ関連のソリューションだった。LIXILがどのような目標を掲げ、PBS ProfessionalとAccessを導入したのか?その理由と導入効果をLIXILで研究部門に携わる担当者に聞いた。

» 2023年01月19日 10時00分 公開
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 LIXILは、大別して3分野でDXに取り組んでいる。1つ目は、従業員側。2つ目は、カスタマー側。そして、これらを実現するためのデジタルインフラの強化だ。今回フォーカスするアルテアの製品は、従業員側のDXとデジタルインフラに関係する。

樹脂窓EW枠の耐荷重解析 樹脂窓EW枠の耐荷重解析 提供:LIXIL

目指したのは「デジタルの民主化」、柔軟な開発環境を整備

 従業員側のDXは、Employee Experienceの頭文字からEXとも呼ばれる。EXは、従業員の満足度を上げることで個々の能力を引き出し、質の高いアウトプットを実現しようとする考え方だ。LIXILでは従業員側のDXに「デジタルの民主化」というキーワードを標ぼうしている。

 一般的には、社内インフラの構築や改善などは、IT部門が現場の要望をヒアリングし、それを請け負う形で現場に展開。しかし、このフローでは時間がかかってしまうと同時に、展開された環境が現場の要望を十分に満たせていないこともあり得る。そこで、LIXILでは、従業員が自ら業務で使うツールや仕組みを開発して使うスタイルを導入した。

 LIXILは、こうした作業スタイルを従業員が活用できるよう、Googleのワークシートを利用したノーコード開発の仕組みを全従業員に導入した。ノーコード開発では、プログラムのコードを書かずにアプリケーションやツールを開発できる。また、アジャイル開発手法のフレームワークである「Scrum(スクラム)」を取り入れ、従業員をサポートしているという。

アルテアのサーバソリューションで最適なクラウド環境を実現

 製品開発やデザインを担う従業員においても「デジタルの民主化」が進んでいる。おのおのが、各自ツールを開発して使う環境は、現場の作業を高速化する。しかし、ツールの稼働を担うインフラ部分では、多数のツールを安全かつ効率的に動かすためのバックボーンが欠かせない。

 LIXILの製品開発では、構造や流体の解析など、計算負荷の高い処理が避けられないという。ソフトウェアのライセンスを含め、限られた計算リソースを有効に使うには、サーバの運用を細かに調整する必要がある。

 導入されたのは、「Altair PBS Professional」と「Altair Access」というサーバ管理ソリューションだ。

サッシ部品「クレセント(錠)」の耐荷重解析イメージ サッシ部品「クレセント(錠)」の耐荷重解析イメージ 提供:LIXIL

 PBS Professionalは、複数のサーバやクラスタのワークロードを監視、最適化するソフトウェア。PBS Professionalによって、研究者や開発者がサーバ上で処理を実行しようとするジョブが適切な計算リソースに振り分けられる。あるいは適切な実行タイミングに調整されながら、全体としての“最適化”が実現する。

 LIXILの研究開発部門が導入したPBS Professionalは、小規模のクラスタから大規模かつ複雑なHPC環境まで、対象を選ばずに管理可能だ。オンプレミスでもクラウドでも使え、クラウドではプロバイダーの縛りもない。また、状況に応じて、クラウド上の計算機能を起動/停止/削除して最適化できる“クラウドバースティング”の機能も備えている。

 PBS Professionalのこうした機能は、将来的に変更となる可能性もあるクラウド環境やライセンス数の変化にも柔軟に対応し、コストを最適化するのに役立つ。

 また、LIXILの研究開発部門では、サーバインフラの利用に関し、2022年4月から従業員が使いやすい環境を整備している。その一例がAccessの導入だ。Accessはブラウザ上で動くWebインタフェースとして機能し、マウスのドラッグ&ドロップで計算サーバの利用を可能にする。提供元のアルテア社自身がソフトウェアベンダーであるにもかかわらず、Accessはどのベンダーのソルバーにも対応している。

 LIXILの計算サーバは、Linux環境で稼働している。このため、計算するにはキーボードからLinuxのコマンドやファイル名などを入力する必要があった。しかし、コマンドの使用はある程度の訓練を要する。特にLinuxコマンドによるファイル操作には危険が伴う。事実、過去にはユーザーのログインに必要な隠しファイルを消してしまうトラブルがあったとのことだ。だが、Accessの導入によって、これらの課題が解決される。

 PBS ProfessionalとAccessによるユーザーフレンドリーなGUIが実現したことで、LIXILでは誰にでも手軽に利用可能な計算インフラが整ったことになる。

LIXIL housing technology 技術研究所 デジタル技術グループ 高橋弥生氏 LIXIL housing technology 技術研究所 デジタル技術グループ 高橋弥生氏 提供:LIXIL

 特に、解析ソフトのライセンス管理と計算リソースの調整は使い勝手がよい。LIXILで建材関連の研究開発に従事するLIXIL housing technology 技術研究所 デジタル技術グループの高橋弥生氏は、「研究所内では、素材の微細構造や熱流体系の解析などで利用者が増えた」と語る。

 PBS ProfessionalとAccessがあれば、研究者や開発者はソフトウェアのライセンスが空くのをじっと待つことなく、Access上でジョブを投げておくだけで、必要な解析が実行されることになる。

手軽に使える計算環境が製品の質を高め、開発をスピードアップ

 この他、LIXILでは、Microsoftの仮想デスクトップ環境であるAzure VDIを使い、設計者向けのアルテアソリューションをリモート環境でも利用できる環境を構築している。

 現在、LIXILは、この環境を活用して、「Altair Inspire」や「Altair HyperWorks」を稼働している。特に、VDI上でInspireが使えてAccessにジョブ投入できるのは、在宅勤務でも使い慣れた環境でスピーディーな解析や最適化ができて便利だという。

 LIXILが利用するVDI環境では、データがクラウド上で完結し、ローカルPCには保存されない。つまり、高いセキュリティが担保される。

 LIXILでは、製造の過程で、素材の分析から、型材の形状最適化、強度解析など多くの解析をして検討を重ねる。そのため、それぞれの過程で利用するCAEやツールの使い勝手は、検討の機会、製品の品質、全体的な開発時間に大きな影響を与えることになる。

 この点において、PBS ProfessionalとAccessの活用、さらにAzure VDIとの連携は、製品企画の早い段階で、構造やデザインのコアとなる検討ポイントや方向性の把握に大きく貢献する。

 LIXILでは、機能性とデザインを両立した「プラスG」というエクステリアシリーズを展開している。このシリーズの構造解析にも、アルテア製品が活用されたという。

「プラスG アーチタイプ」の強度解析例 エクステリア建材「プラスG アーチタイプ」の強度解析例 提供:LIXIL

 CAEの活用に関して、高橋氏は「専任部署以外の、開発・デザイン・研究・製造部門で、もっと広く、より上流の部分で活用してもらいたい」と語る。そして、それに向けた活動を続けていきたいと話す。例えば、簡便に使うためのカスタマイズやナビゲーション機能などを用意してCAEへのハードルを下げ、CAEを身近に感じて使ってもらう活動をしている。そして利用が増えると気にしなければならないのがクラウドコストの問題だ。その対策のために、PBS Professionalのクラウドバースティング機能の利用を検討している。

 既に、アルテアの各種ソリューションは、LIXILの製品開発やデザインに欠かせないものとなっている。現在、続けられているDX活動からどんな製品が生まれるのかが楽しみだ。

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提供:アルテアエンジニアリング株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2023年2月18日