2024年に迫る建設業の労働時間規制――。とくに、膨大なデータが年々蓄積されていく維持管理業務が紙の帳票に依存したままでは、作業員の負担は減るどころか増す一方になってしまう。現状では、点検履歴を探すのも一苦労で、帳票への入力ミスも起こりがち。報告書をデジタル化し、クラウドでの管理が可能となれば、作業員が現場から直行直帰できるのはもちろん、関係者間の情報共有も図れるなど、大幅な業務効率化を見込めるはずだ。設備メーカーや修繕会社などで採用が進む、点検業務をデジタル化する日立システムズの「点検サポートサービス」が、保守業務の現場でなぜ支持されているのか、その導入効果を明らかにする。
設備メンテナンスのサポート事業で、10年以上にわたって実績を重ねる日立システムズ。顧客数はビルやマンションの管理会社が約500社(累計14万5000棟)、内外装や設備などの施工会社は約600社と、幅広い企業から厚い信頼を得ている。
同社では2020年末、これまでに培ってきた設備保全のノウハウを生かし、点検・修繕作業を見える化するデジタルツール「点検サポートサービス」の提供をスタート。点検サポートサービスは作業報告書のペーパーレス化による業務効率化に加え、「施設カルテ」というツールで設備保全に関わるさまざまな情報を網羅。施設の基本情報や設備機器、修繕履歴なども一元管理し、現場で作業員が必要な情報を容易に把握できる特長がある。
導入にあたっては、専門のクラウドサービスではなく汎用性の高いサイボウズの「kintone」をベースにしているため、コストを抑えつつ短時間で本格的な運用が可能なのも魅力の1つ。2021年9月からは、低価格で現場での使用感をテストし、導入効果の数値的なシミュレーションができるトライアルパックの提供も開始している。
DXプラットフォームサービス営業統括本部 DXビジネスサポートサービス本部 第二営業部 第一グループ 部長代理の竹内勝人氏は、「いまだに工事や保守の現場では、現場の制約や検収印が必要とされており、紙ベースでの報告書作成が圧倒的に多い」と所感を述べる。
とりわけ、同社で7000店舗に上る大型コンビニチェーンの保守を元請けとして受託した際、要冷機器メーカーや地場の施工会社といった複数の企業が連携して現場に入らなければならないのに、アナログによる情報連携の障壁の高さを強く感じたという。「そこで、当社で培ってきたITの技術力と保守のノウハウを生かし、導入しやすいシンプルなデジタルツールを提供したいと考えるに至った」と開発背景を語る。
従来、ビルや店舗の点検・修繕時には、作業員は現場から事務所に戻って、写真などを整理しながら紙ベースでの点検・作業報告書を作成していたため、業務負担が増すばかりかミスも起きやすかった。また、顧客本部への提出のための紙帳票のとり纏(まと)めにも多大な工数が掛かっていた。点検サポートサービスでは、従来は紙で管理していた報告書や写真を全てペーパーレス化するとともに、点検作業のスケジュールや進捗状況を効率良く管理できる。
現場作業員は、現地からタブレット端末などで写真や動画をクラウドにアップロードし、その場で報告書の作成と登録が行える。各種情報はクラウド上で管理されることから、リアルタイムで施設やビルのオーナー、管理元会社、修繕会社と共有が図れる。このため、個人ではなく組織単位で作業の漏れや不備を防ぎ、集積したデータを分析して“見える化”することで副次的なメリットも得られるのだ。例えば、点検結果や修理履歴データを活用し、予防保全に向けた次年度の予算化提案につなげた事例が挙げられる。
クラウド自体も、多様な帳票系プラグインに対応し、1ユーザーあたり1500円とローコストなkintoneを活用しているため、オンプレミスで自前のサーバを構築したり、管理したりする必要がなく、手間や時間をかけずに実運用にまでスムーズに臨める。イニシャルコストとしては、低価格の初期導入費に、kintoneの月額利用料とプラスα程度の月額運用サポート代のみで済む(運用サポート代はユーザー数で割引きアリ)。
他サービスとの差別化にもなっている「施設カルテ」は、施設の住所や竣工・改装などの履歴といった基本情報をはじめ、図面、工事情報、修繕のステータス、設備機器の情報を一目で確認。各種項目はカスタマイズに対応しており、報告書も各社のフォーマットに合わせた内容に落とし込める。また、保守業界では協力会社と連携して保守対応をすることが当たり前となっているが、そういった業務において一つの基盤を活用できることも大きなメリットとなっている。
「あらゆる施設情報をデジタル帳票で一元管理できるため、コンビニをはじめとする多店舗チェーン、これらに関わる建設会社、設備メーカー、ビルメンテナンス会社など、点検・修繕量の多い企業には導入メリットを実感いただけるはず」(DXプラットフォームサービス営業統括本部 DXビジネスサポートサービス本部 第二営業部 第一グループ 主任 中島啓介氏)。
日立システムズの調べによると、どれくらい作業効率が向上するかを時間で表した場合、次のような結果が出ている。事前準備では、事務所での対象施設の検索・確認が不要となり、現場に到着してからタブレット端末で情報を確認すれば済むため、10分以上の削減につながる。事後処理では、事務所やオフィスに戻って報告書をまとめる手間が解消されるばかりか、データ登録もアップロード時に自動で行われるため、少なくとも30分は時間短縮できるとし、合計で1件あたり約40分の工数削減に寄与する。仮に月間の出勤件数(同社顧客の平均値:1275件)で換算すると、約850時間の業務効率化を実現するというのだから軽視できない数字だ。
日立システムズでは、点検サポートサービスに加えて、修繕対応の依頼を一括で受け付ける「設備保全業務特化型コンタクトセンター」も展開。設備保全の総合窓口を24時間365日体制で用意し、休日や夜間の依頼についても、施工・保守会社の手配から進捗管理までワンストップでサポートする体制を整えている。
ビジネスクラウドサービス事業グループ コンタクトセンタ&BPOサービス事業部 BPOシステム構築本部 設備マネジメントサービス部 部長 宮崎健一氏は最後に補足として、「最終的には設備保全全体のプラットフォームを提供することが可能だ。業者手配、現場調査、調査報告書、見積提示と、各工程で現在のステータスを見える化し、デジタル化による統合的な保守管理で保守事業を展開している企業に貢献したい。点検サポートサービスは、その入り口にあたるものだ。ぜひ、トライアルパックを一度お試しいただき、デジタル化による業務効率化を体感して欲しい」と話す。
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アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2021年10月21日