「二子玉川 蔦屋家電」の内装設計を手掛けたことや、国内外のアワード受賞で知られる一級建築士事務所アイケイジー。同事務所の日々の設計業務を支えているのが、2018年11月にリリースされた「Autodesk AutoCAD LT 2019 for Mac」だ。この“Mac版”のAutoCADが、海外案件の受注や設計業務を行う上で、非常に重要な役割を担っているという。その理由や導入のメリットを、アイケイジーの設計担当者に聞いた。
オートデスクは2018年11月、建築・土木・製造業など幅広い業界で利用されている汎用CADソフトウェア「AutoCAD」と「AutoCAD LT」のMac OS対応版である「AutoCAD 2019 for Mac」と「AutoCAD LT 2019 for Mac」を発売した。これまで両ソフトウェアは英語とフランス語のみの対応だったが、今回のアップデートで日本語とドイツ語が追加され、Macユーザーの設計者にとっては待望の、Macコンピューターの日本語AutoCADで設計業務を行える環境が整った。
数々のデザイン賞を受賞しているアイケイジーは、2015年からAutoCAD LT for Macを導入。日本語対応バージョンもリリース後すぐに購入し、ここ数年でオファーが増えている海外案件をはじめ、国内でも商業施設やハイグレードの注文住宅の設計業務で、今まで以上に活用する機会が増えてきているという。
東京・渋谷区のオフィスで、アイケイジーでプロジェクトマネジメントを担っている設計者の小林和貴氏と、図面や提案資料の作成を担当している設計アシスタントの山口珠生氏に、最近の実例などを紹介してもらいつつ、AutoCAD LT for Macの導入経緯や日々の業務での使用感などを聞いた。
空間プロデューサーとして知られる池貝知子氏が主宰するアイケイジーは2004年の設立。生活環境空間のデザインを独自の視点から捉え、意匠性の高い商業施設やラグジュアリーな大規模邸宅のリノベーションなど、主に内装領域のトータルプロデュースを手掛けている。内装と一口に言っても、土地の選定から始まり、建物・アプローチの建築設計、インテリアデザイン、照明デザイン、家具・カーテン・リネン・食器・家電製品といった備品コーディネート、オーディオ環境の提案、庭の植栽計画、防犯計画などに至るまで多岐にわたり、一貫したテーマに基づいてさまざまなジャンルでの空間づくりを行っている。
アイケイジーの名を一躍広めたのは、2015年に東京・世田谷区玉川にオープンした「二子玉川 蔦屋家電」である。従来の家電量販店のイメージを覆すようなデザイン力が高く評価され、JCD(日本商環境デザイン協会)やDSA(日本空間デザイン協会)のアワードを受賞したことで、その名を世に知らしめることになった。
最近では、その高い意匠設計の手腕を聞き付けて、海外、特に中国からダイレクトに依頼が来ることが増えており、最新事例では2018年末に開業したインパクトあるエントランスを備えた中国・西安の大型書店プロジェクトなど、その活躍の場はグローバルに広がりつつある。
そうした海外案件について、「協力会社がどのソフトウェアを扱えるかがパートナーシップのカギになってきます。とくに世界標準となっているAutoCADは、データ連携の上でも不可欠。設計事務所の世界進出のためにも、グローバルで採用率の高いツールを使いこなせるようになる必要がありました」と、実際にCADで図面作成を行っている山口氏は話す。
これまでアイケイジーでは、作図から提案資料の作成までを他社のCADソフトをメインに使用しており、AutoCADの標準ファイル形式「DWG」のデータが送られてきた場合は一度ベクターに変換していた。しかし、不具合が生じることも頻繁で、特にデータが重くなってしまうことが課題となっていた。
解決策として2015年に導入したのが、「AutoCAD LT for Mac」だった。現在ではWindowsマシンを取り入れてAutoCAD LTも併用しているというが、当時Mac版にしたのは、デザインをする上でソフトウェアが充実しており、マシンスペックの相性も良かったことがその理由だという。
「AutoCADは、それまで使用していたソフトとユーザーインタフェースが異なっていたため、最初は戸惑いましたが、トレーニングガイドを読んだり講師を招いて教えてもらったりしながら覚えていきました。ブラックの画面に、図面のオブジェクトがカラフルな線で表示されるのには若干抵抗があったものの、いざ作図をしてみると一目で間違いが把握でき、より正確な図面が書けるようになりました」(山口氏)。
また、AutoCAD導入後のメリットについて山口氏は、「外部とのやりとりや社内でも複数のスタッフが作図に携わるため、間違いが発生しやすいシチュエーションは少なくありません。複数のバージョンのDWG図面を簡単に比較できる機能によって、設計段階で整合性を図ることが格段に向上しました」と語る。
「作業中に疑問やトラブルが起きても、オートデスクはサポート体制が充実しているので、電話はもちろんのこと、ライブチャットでの問い合わせにも応じてくれます。Autodesk Knowledge Networkの専用フォーラムをはじめとし、ネット上にも情報が豊富にあるため、自分で原因を探して対策を考えられるのも、市場シェアの大きいオートデスク製品ならではの良さですね」(山口氏)。
オートデスクの公式オンラインストアでソフトを購入した経緯について、日常的にMacで設計業務を行っている小林氏は、「繁忙期だったため夜間しか時間がなく、Webで検索したところ、オンラインでも購入可能なことを知りました。購入フローの案内も分かりやすく、支払いもカード決済が選べたので、時間の無い中、業務の合間にスムーズな処理ができて助かりました」と話す。公式オンラインストアでは、クレジットカード以外にもPayPal、銀行振り込み※、コンビニ払いにも対応しており、最短で購入翌日から使用することが可能だ。
大企業のように物品の調達体制がシステム化されているわけではなく、現場のスタッフがソフトを直接購買する中小の建設会社や設計事務所にとっては、自動の見積書作成機能も用意されており、セルフサービスで購入できるオンラインストアは最適な選択といえる。
※事後払い、掛け売りは購入相談窓口に問い合わせ。フリーダイヤル0800-080-4245(営業時間:9:00〜17:30<土日祝日、年末年始を除く>)。
これまでは買ったタイミングによってバージョンが違うことや、後続のモデルをいざ使ってみたら仕様が大幅に変更されていて、操作を覚え直すのに時間がかかるといった不便さがあったが、サブスクリプションでは自分のタイミングでいつでもアップデートが可能なことも利点の一つ。
導入のしやすさは販売ライセンスの形態にもある。オートデスクの製品購入は従来の買い取り方式ではなく、サブスクリプション方式なので、初期費用が抑えられるのも購入者の商品選びでは重要なポイントになるだろう。また、最短で1カ月のライセンス期間や、最長30日間の返金保証が用意されているので、以前より導入障壁が低くなり、少人数の会社やスタートアップ企業にも手に取りやすくなった。
AutoCAD LT 2019 for Macは、シングルユーザー・1カ月サブスクリプションだと7000円、1年間サブスクリプションは5万9000円(ともに税別、2019年4月現在)。長期で利用予定の場合は、1年当たりの費用が抑えられる3年間サブスクリプションという選択肢もある。なお、既にAutoCAD LTを利用しているユーザーは、クロスプラットフォームライセンスを適用することで、AutoCAD LT 2019 for Macを使用できる。
日本語版を使ってみた感想として小林氏は、「英語表示のままでは、なかなか業務レベルで使えるまでは習熟度が達しませんでした。日本語化されたことで、慣れないアプリケーションへの抵抗感が薄れ、より身近なツールとして使えるようになったことは大きい」と語る。
最後に小林氏は、「2019年の目標としては、海外案件獲得力の強化を目指し、海外では既に広がっている3Dモデリングに取り組むことを検討しています。そのために、ワールドワイドで標準となっているAutoCADは欠かせません。基本的には2次元かつ手書きの検証は継続しますが、AutoCADを活用して手書きの線図をスキャンして、ラスターデータからベクトルへと図面化させる機能や、建築・設備などの設計に必要なオブジェクトが含まれた業種別ツールセットなどで、さらなる業務の効率化や設計時間の短縮を図れれば理想的ですね」と今後の展望を語った。
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提供:オートデスク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2019年5月31日