世界遺産「軍艦島」の保存/整備で清水建設と長崎市が協定 高耐久木造拠点を新設へ:プロジェクト
清水建設と長崎市は、世界遺産「端島炭坑」の保存と整備、公開活用を目的に連携協定を締結した。大正期の歴史的建造物が残る島内に、新たに木造平屋の研究拠点を新設する。
清水建設は2025年10月15日、長崎市と連携協定を締結し、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄/製鋼、造船、石炭産業」の構成資産である「端島炭坑(軍艦島)」の保存/整備と、公開活用に向けた取り組みを開始すると発表した。
取り組みの第一弾として、島内に木造平屋の研究拠点を設置する。2025年11月に着工し、同年12月の竣工後に設備関係の試用と調整を経て、2026年3月の運用開始を目指す。
端島には建築史的に価値ある建物群が残っており、清水建設が新築/改修を担った「三菱端島砿業所30号アパート」は、大正期に建設された日本最古の鉄筋コンクリート造集合住宅とされている。また、端島に所在する多くの建物を清水建設が建設、保全してきた経緯から、世界遺産登録に際しては、歴史的資料として保管してきた図面類を長崎市に提供した。
長崎市と市教育委員会は2017年に「端島炭坑 修復/公開活用計画」を策定し、現在は第2段階として避難施設の整備を進めている。一方、清水建設では、アクセスが困難で不十分なインフラ環境下での施設整備/運用技術の開発に注力している。清水建設から市に連携を申し入れ、今回の協定に至った。
床面積50平方メートルの高耐久木造平屋を建設
端島内に新たに設置する木造平屋の研究拠点は、床面積約50平方メートルで、暴風雨や高波など過酷な自然環境に耐えられる高耐久性仕様とする。島内にある史跡構成要素以外のがれきを基礎部分に再利用するなど、揚陸資材の削減も図る。
研究拠点は清水建設と長崎市関係者が端島に上陸した際の事務所や備蓄倉庫として機能する他、荒天時の緊急避難所としての利用も想定している。さらに、拠点の運用を通じて自己処理型水洗トイレの有効性も検証する予定だ。
清水建設と長崎市は今後、端島での具体的な取り組みについて協議する。建物群の保存/整備に加え、端島を観光資源として活用していくためのVRコンテンツ制作なども検討している。
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