オランダ“世界遺産運河”の護岸改修実証で、技研ヨーロッパによる圧入工程が完了:施工
技研製作所グループの技研ヨーロッパを中心とする合弁会社「G-Kracht」が、オランダの世界遺産「アムステルダムの環状運河地域」を対象とした護岸改修にあたっての新技術開発プロジェクトで、パイロット施工の圧入工程を完了させた。
技研製作所のオランダに本社を置くグループ企業Giken Europe(技研ヨーロッパ)を中心とした合弁会社「G-Kracht(ジークラフト)」は2023年3月15日、オランダの世界遺産「アムステルダムの環状運河地域」での護岸改修のための新技術開発プロジェクトで、実証施工(パイロット施工)の圧入工程を完了したと発表した。
実証施工での圧入工法の高い評価が商業化フェーズの契約に
実証施工が終わったことを受け、現在は次の8年間で計3.3キロ区間の工事受注が保証されている「商業化フェーズ」移行への協議が、発注者のアムステルダム市で始められている。その中で、発注者や地元住民からは、限られたスペースで、周辺環境に影響を与えず効率的に施工した圧入工事に対し、「静かで早い」などと満足の声が上がり、商業化フェーズ契約への大きな弾みとなったという。
2022年11月に始まった圧入工事は、グループ企業の技研施工による技術指導のもとで順調に進行。地元住民が大切にする並木の下では、機械装置を既設杭上で稼働させる電動「GRBシステム」を投入し、“省スペース施工”で樹木を伐採することなく、カーボンニュートラルにも貢献しながら施工。今後は、コンクリートパネルの設置などを行い、2023年7月に実証施工の全工程を終える。
なお、GRBシステムの基本構成は、圧入杭を地中に押し込む圧入機本体を先頭に、油圧動力源のパワーユニットとそれを移動させるユニットランナー、杭を建て込むクランプクレーン、作業基地から杭を搬送するパイルランナーで構成。全ての機械装置が杭をつかんで自立しているため、転倒の危険性は無く、工事の影響範囲は杭上の機械幅のみにまで抑えられる利点がある。
新技術開発プロジェクトの正式な協定名は、Samenwerkingsovereenkomst voor de Onderzoek- en Ontwikkelfase van het Innovatiepartnerschap Kademuren(アムステルダム市運河護岸イノベーションパートナーシップの研究開発フェーズに関する協力協定):AI 2018-0423で、協定者はオランダ・アムステルダム市とG-Krachtの構成社として、技研ヨーロッパ、Gebr. De Koning(デ・コーニング)、Van Gelder(ヴァン・ゲルダー)。業務名は、AI 2018-0423 Innovatiepartnerschap Kademuren Gemeente Amsterdam(AI 2018-0423 アムステルダム市運河護岸イノベーションパートナーシップ)で、工事場所はSingel 284, 1015BB Amsterdam。
実証施工期間は2022年9月〜2023年7月の予定で、このうち圧入工工期は2022年11月〜2023年3月。施工に際しては、次世代圧入機「ジャイロパイラー GRV0611e」と「クランプクレーン CB2-11」を用いて、直径508ミリ、長さ13.75〜25.73メートルの鋼管杭271本を圧入れする。
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