世界遺産「韮山反射炉」が清水建設の施工で改修完了、煉瓦に漆喰塗りで創建時を再現:リノベ
清水建設が施工を担当してきた世界遺産「韮山反射炉」のリニューアル工事が完了し、このほど一般公開した。
静岡・伊豆の国市は、清水建設が受注し、2020年10月より進めてきた世界遺産「韮山反射炉」の保存修理工事が完工し、2021年10月30日から一般公開すると公表した。
建造時と同様に煉瓦表面の一部に“漆喰塗り”を採用
韮山反射炉は、西洋式大型大砲の鋳造に必要な反射炉(金属融解炉)として1857年11月に完成し、1864年まで稼働していた。鋳鉄の溶解が実際に行われた反射炉では世界で唯一現存する遺構とされている。今回の保存修理工事は、2015年7月のユネスコ世界遺産(文化遺産)登録後は始めての改修で、1985〜1989年に行われた大規模保存修理工事以来、32年ぶりのリニューアルとなる。
これまで32年の間に、煙突内部や炉体内部は風雨の影響を受けづらいため、目立った破損は無かったものの、外部の煉瓦(れんが)や石材、鋼材の塗装などが目視で確認できるほどに劣化していたため、2018年に伊豆の国市が保存修理工事の実施を決定。その後、文化財建造物保存技術協会が基本・実施設計・監理を担当し、清水建設が2020年9月に工事を受注して翌10月に着工した。総事業費は1億4745万円。
工事の概要は、煉瓦の補修と反射炉本体の補強鉄骨の塗装をメインとし、反射炉本体への漆喰(しっくい)塗りの試験施工も含まれた。建設当時に煉瓦部分は、漆喰で覆われていたが、改修前には痕跡が残っているのみだったため、建造時と同じく煉瓦表面に漆喰を塗る方法を検討する目的で行った。
煉瓦補修では、比較的劣化が少ない850カ所については、モルタルと漆喰で表面を補修。劣化が進んでいる240カ所は、補足煉瓦を表面に貼り付けて固定した。また、著しく劣化している208カ所は全部、または一部を新しい煉瓦に置き換えた。補強鉄骨の塗装は、全ての塗装を剥(は)がし、鋼材にさびや劣化が無いことを確認したうえで下地処理とフッ素樹脂塗装を施した。なお、漆喰塗りの試験施工は、反射炉本体の一部に実施した。
これまでの工事の経過としては、2020年10月の仮設足場の組み立てからはじまり、同年11〜12月に煉瓦の劣化調査、同年12月〜2021年3月に補修用煉瓦製作、同年4〜5月に煉瓦補修、同年6〜8月に鉄骨塗装、同年9月に漆喰塗りの試験施工。10月以降は仮設足場の解体工事を行った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- BAS:日立ビルシステムが本社を新しい働き方の実験場に、新型のビルシステムを導入
日立製作所と日立ビルシステムは、日立ビルシステムの本社と亀有総合センターのオフィスを、ニューノーマルの働き方を検証する実験場をイメージして改修し、独自のIoTプラットフォーム「Lumada」を用いたビルIoTプラットフォーム「BuilMirai」および就業者向けアプリケーション「BuilPass」を導入した。 - スマート化:オープンスペースでの音漏れを10分の1に抑える傘上の会話支援システム、清水建設とTOA
清水建設とTOAは、オフィス内での会話が周囲に拡散するのを抑制する天井に設置するカサ状の新たな設備「オトノカサ」を開発した。オープンエリアなどのデスク真上に設置することで、話し声を拾って指向性スピーカーから拡声した音声を天井に吊(つ)るしたカサの下だけに届けるため、周囲への騒音とならない。 - リノベ:リアルゲイトが東京タワーを見ながら働けるオフィスを東京都港区で開業
リアルゲイトは、東急が東京都港区東麻布で所有していたマンション「サマセット麻布イースト東京」をイノベーションオフィス「GROWTH BY IOQ」に改修し、入居者の募集を開始した。 - ファシリティマネジメント フォーラム 2021:これからのBCP対策の在り方、竹中工務店が提案する「有事と平時に対応する施設の“再構築”」
近年、国内で相次ぐ自然災害の甚大な被害を鑑みると、建物のBCP対策については現状を見つめ直し、将来の在り方を検討すべき時期に来ている。ファシリティマネジメント フォーラム 2021で講演した竹中工務店で事業リスクマネジメントグループ長を務める杉内章浩氏は、BCP/リスク対策の必要性は認識していても実施がなかなか進まない現況を踏まえ、多数の相談を受けている建設会社の立場から参考になる事例を交えつつ、とくにここ数年の懸案事項となっている感染症対策にもスポットを当て、問題解決の具体的な手法を提言した。 - リノベ:カーボンマイナスを目指す実証オフィスの運用を開始、戸田建設
戸田建設は、同社が茨城県つくば市で保有する環境技術実証棟の改修工事を完了し、「グリーンオフィス棟」としてリニューアルした。今後は、グリーンオフィス棟を運用しつつCO2排出量の削減に取り組むと同時に、技術的な検証も行い、顧客に提供する施設の開発に生かしていく。 - スマートビルディング:コロナ対策や生産性向上を実現するビル向けソリューション、ジョンソンコントロールズ
ジョンソンコントロールズは、新型コロナウイルス感染症や働き方と環境意識の変化により変わったビルシステムのニーズを踏まえて、BASなどの運用技術とインフォメーションテクノロジーを組み合わせられるプラットフォーム「Open Blue」を開発した。