BIMやドローンなど建設ICTの動向に大きな進展があった1年、2022年「BUILT」記事ランキング:2022年BUILT年間記事ランキング(2/2 ページ)
2022年にBUILTで公開された閲覧ランキングTop10の記事を紹介するとともに、1年間の“建設×テクノロジー”のトレンドも振り返ります。
2022年1月2日に、高所作業でフルハーネス着用や新構造規格への適合が義務化
建物の新設は、物流施設だけでなく、3位の「100年に一度の街づくり”を進める中野駅前再開発の概況」など、東京五輪後にも首都圏では、続々と再開発プロジェクトが計画されています。
一例として、「東京」駅日本橋口前の常盤橋エリアでは、日本最高層となる高さ約390メートルの超高層ビル計画「トーチタワー(Torch Tower)」、森ビルによる港区最大級となる「虎ノ門・麻布台プロジェクト」、新宿駅では小田急電鉄と東京メトロが事業主体の西口地区と並び、京王電鉄とJR東日本による西南口地区の計画も進行中で、「高輪ゲートウェイ」駅周辺では4棟の超高層巨大ビルを建設する「品川開発プロジェクト」、他にも日本橋、八重洲、渋谷の各エリアでも、大規模な都市再生事業が都心部で予定され、民間の建築工事全体を下支えしています。
順序が逆になりますが、ランキング2位には、2021年にもランク入りし、2022年1月2日以降に原則着用が義務化となった「2月1日から建設業で5m超の高所は“フルハーネス原則化”、新構造規格への適合も」の記事がランクイン。
本記事では、厚生労働省が2019年2月1日に施行した“フルハーネス型”墜落制止用器具(旧名称:安全帯)の原則使用などを盛り込んだ改正政省令を解説。経過措置期間を経て2022年1月2日以降には、建設業の高さ5メートル超えの高所作業でフルハーネスの着用が義務化となっただけでなく、墜落制止用器具の新構造規格への適合も必須となり、旧構造規格に基づく胴ベルトやフルハーネスは使用禁止になるとともに、メーカーや代理店も製造や販売ができなくなりました。
その他にも、法令動向のトピックスとしては、2019年4月に施行された改正労働基準法で、5年の猶予期間を終え、月100時間未満/年間720時間以内の上限規制が多業種と同様に建設業にも適用されることが、間近に迫る問題となっています。
そのため、ランキングでも、第7位の【第5回】建設現場での残業規制への対処法、現場代理人の働き方を変えるにはや第9位の【建設サイトReport】大和ハウスの「新・担い手3法」への対応策 “現場管理を無人化”するデジコンPJ、第10位のデジタルツインは建設業を魅力的な労働の場に変えるか?「3D K-Field」で“未来の建設現場”に挑む鹿島建設といった建設業各社の働く環境改善に向けた経営改革やICT活用の事例が長期にわたって参照されました。
建設業界の有識者が、建設DXへと至る多数の連載を展開
このうち、第7位は、国内で経営コンサルタント業界パイオニア・タナベ経営の連載「建設専門コンサルが説く“これからの市場で生き抜く術”」の第5回。本連載は、タナベ経営が開催している建設業向け研究会「建設ソリューション成長戦略研究会」を担う建設専門コンサルタントが、業界が抱える諸問題の突破口となる経営戦略や社内改革について、各回テーマを設定してリレー形式で解説しています。第5回は、現場とバックオフィスが協力し、会社一体で「働き方改革」「生産性改革」を成功させたユースケースを紹介しています。
第8位には、Revitユーザー会の初代会長を務めた伊藤久晴氏の連載「日本列島BIM改革論〜建設業界の“危機構造”脱却へのシナリオ〜」。毎回、ここでしか見ることのできないBIMの独自視点での解説は、多くの読者から好評を博しています。
BUILTでは、業界有識者による連載を2022年もメインコンテンツの1つとして注力してきました。ランキング4位で2022年12月に最終回を迎えた一級建築士の鍋野友哉氏による「木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―」をはじめ、土木学会の最新研究論文から“土木×AI”の可能性を読み解く、阿部雅人氏の筆による「“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト」など、さまざまな角度から建設DXへと導く強力連載を展開しています。まだ、未読の方はぜひこの機会に各連載のバックナンバーを読んでみてください。
年後半には、建設DXを見据えた2つの新規連載がスタート。日立ソリューションズの建設ICT専門家が、建設業の「働き方改革」につながる現場作業の生産性向上や安全衛生といった身近な業務改革を解説する「建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上」や野原ホールディングスとM&F tecnicaの意欲的な提言「建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜」のどちらも、初回から多方面から反響を得ています。
これからも、人材不足や技術承継の問題は継続することが予測されるものの、建設業界がどう対応していくべきかを、「“建設×テクノロジー”によって建設産業の諸問題を脱構築(deconstruction)する」をテーマに掲げるメディアの使命として、さまざまな有益なコンテンツを通して解決策を示していく所存です。
それと同様に、近年の激甚化する災害への“防災・減災”、社会問題として顕在化しつつある“インフラ老朽化対策”、さらに世界的な潮流となっているSDGsやカーボンニュートラルといったキーワードの観点で、BIMを核に、設計〜製造〜施工〜維持管理の建設プロセス全体、または建設のサプライチェーン全体で、建築・建設業界がどのように持続可能な社会の実現に貢献できるかなども、深掘りしていければと思っています。
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