「住宅ローン地獄から解放を!」セレンディクスの300万円“3Dプリンタ住宅”が示す、未来の住宅建築:デジタルファブリケーション(1/4 ページ)
セレンディクスは、3Dプリンタによる住宅建築の社会実装を目指すスタートアップ企業。住宅建設コストの大部分となる人件費を3Dプリンタによる自動化で最小化し、「住宅ローンから脱却して、クルマを買い替えるように、低価格で家を買い替えるようにする」と標ぼうしている。これまでは、3Dプリンタによる家づくりは、建築基準法にどう適合させるかや耐久性のあるマテリアル(素材)をどうするかなどのハードルがあったが、セレンディクスの3Dプリンタ住宅にはそうした課題に対する解決策があるという。
セレンディクスは、3Dプリンタを使った家づくりで注目されている先進企業。同社が導入した3Dプリンタを使うと、小規模な住宅であれば24時間ほどで完成する。デジタルファブリケーションによって高額な人件費が抑えられるため、圧倒的な低価格で住宅が供給できるのが大きな特徴だ。
ただ、3Dプリンタでの家造りは、これまで現行の建築基準法への適合や原料の調達などといった点で難しいとされていた。
セレンディクスの3Dプリンタ住宅はどこに新規性があるのか、どのように市場を開拓していくのか、COO(最高執行責任者) 飯田国大氏に話しを伺った。
3Dプリンタ住宅に取り組む理由「日本人を長期住宅ローンから開放したい」
3Dプリンタは、時間の経過によって硬化する素材を、ノズルから吐出し、一層ごとに立体を作っていくマシン。骨の内部構造のように、強度と軽さを両立した造形物を作る方法として、数年前から、製造業や建築業のモックアップや部材の制作用途など、多くの産業から期待されているデジタルファブリケーション技術だ。
セレンディクスは、2018年8月に創業以来、3Dプリンタで住宅を作ることにチャレンジしてきており、2022年3月に日本で初めて3Dプリンタによる住宅を23時間12分で完成させた。社の掲げる目標としては、3Dプリンタによって住宅の価格を下げ、「ローンが30年以上で、完済するのは70代」といった日本の住宅状況を変革することを掲げている。
セレンディクス共同創業者のCOO 飯田国大氏は、日本では住宅の価格が高くローン期間が長いことに触れ、人が自由に生きることを阻害する最大要因は“家”だと指摘する。
国内で住宅の価格が高いのは、要因の1つとして建設に多くの人手が欠かせないことがある。住宅の建設コストで、人件費は大きな割合を占める。そこで、セレンディクスは、3Dプリンタによるデジタルファブリケーションで住宅建設を半ば自動化し、最小の人件費で家を作れるようにした。
セレンディスクが作る家は、球体を基本としている。球体は、物理的に強く、自然災害が多い日本に適しており、内部に柱の無い空間を作れる利点もある。
セレンディクスは3Dプリンタ住宅の第一弾として、愛知県小牧市の百年住宅 小牧工場での23時間12分で完成したテスト製作を経て、2022年10月に約10平方メートルの延べ床面積で、販売価格約300万円の球状住宅「Sphere(スフィア)」を発売。Sphereの意匠設計は、米ニューヨークでClouds Architecture Office(Clouds AO:クラウズ アオ)を主宰し、NASAとの共同設計で火星建設に向けたプロジェクトでも知られる建築家の曽野正之氏が担当した。
発売と同時に2022年度販売予定数の6棟を完売した「Sphere(スフィア)」。画像のものは、テスト施工のため、3Dプリンタを使って作ったことを強調する目的で、積層の横縞はわざと残してあるとのこと 提供:CLOUDS Architecture Office
Sphereは一般の住居というより、グランピング(glamorous+camping)施設や災害用住宅を想定した作りとなっている。そのためか、都心にマンションを所有する不動産デベロッパーからの問い合わせが多く、その答えを飯田氏は「Sphereは都心に住む人の“セカンドライフ”を叶える家」と説明する。
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