国指定重要文化財「仁風閣」の素屋根架設に着手、保存修理工事が本格化 清水建設:プロジェクト
清水建設は、鳥取県鳥取市の国指定重要文化財「仁風閣」の保存修理工事で、建屋を覆う素屋根の架設工事に着手した。2027年9月の竣工を目指し、工事が本格化する。
清水建設は2025年8月29日、鳥取県鳥取市の国指定重要文化財「仁風閣」の保存修理工事の本格化に向け、建屋を覆う素屋根の架設工事に着手したと発表した。2027年9月の竣工を目指す。
素屋根の大きさは、27(間口)×34(奥行き)×22(高さ)メートル。計画では2025年10月末までに完全に建物を覆い、次に仁風閣が姿を現すのは2027年6月の予定だ。
保存修理工事の発注者は鳥取市、設計/監理は文化財建造物保存技術協会、施工は清水建設。木造2階建てで、建築面積は541平方メートル、延べ床面積は1073平方メートル。工期は2025年1月〜2027年9月を予定している。
仁風閣は、1907年に旧鳥取藩主、池田侯爵が鳥取城跡に建設した邸宅で、当時の皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の行啓時宿泊施設としても使用された。ルネサンス様式を基調とした建物で、外装の水平ラインを強調した装飾などに見られる幾何学的な美しさが特徴。設計は、国宝 迎賓館赤坂離宮などを手掛けた片山東熊氏。
仁風閣は1973年に国の重要文化財に指定され、1974〜76年にかけて大規模保存修理が行われた。しかし築年数に伴う劣化が激しく、鳥取市が2020年に実施した調査では、木部の腐朽による屋根や外壁からの深刻な雨漏り、れんが煙突の補強鉄骨の発錆、腐食が確認された。2021年に保存修理を決定し、2024年12月の入札の結果、過去の大規模保存修理も手掛けた清水建設が受注した。
今回の保存修理工事では、床下部分の構造補強や屋根の葺き替え、傷んだ木部の補修と取り換え、壁/天井紙の張り替え、煙突の更新などを行う。文化財の保存修理では部材の再利用を前提とした慎重な解体が求められる。腐食が進み利用できない部分に限定して新材に置き換える他、部材に残るクギや加工の痕跡を調査して、部材が新築時から残るものか後世に取り換えられたものなのかなどを診断、記録するなど、緻密な作業が求められる。
現在は素屋根の架設工事と並行して1階の床板を取り外している。今後は床下に構造補強材を取り付ける。
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