ローカル5G活用、ダム現場でケーブルクレーン自動/自律運転に成功 大林組:スマートコンストラクション
大林組は、国土交通省中部地方整備局発注の「新丸山ダム建設工事」でローカル5Gを活用したケーブルクレーンの自動/自律運転に成功した。
大林組は2025年4月16日、国土交通省中部地方整備局発注の岐阜県加茂郡「新丸山ダム建設工事」で、ローカル5Gを活用したケーブルクレーンの自動/自律運転に成功したと発表した。
大林組は新丸山ダム建設工事で「自律型コンクリート打設システム」の確立を目指している。その第1段階として今回、コンクリート運搬を運搬するケーブルクレーンの自動/自律化に着手した。
ケーブルクレーンは2支点間にかけ渡したワイヤロープを軌道にトロリーが横行する。運転速度が速いため、コンクリート放出時や吊り荷の移動中にバケットが大きく揺れる特性を持つ。従来は、現場の合図者とクレーン操作室のオペレーターが連携し、熟練の技術で揺動を抑えられるように制御していた。
今回のシステムでは、トロリーやフックに取り付けた無線端末が揺動を即時に検知/制御し、オペレーターの熟練度に依存せず安定した作業品質を確保する。さらに、フックに搭載されたカメラで撮影した4K映像がリアルタイムで監視室へ伝送されることで、高解像度の映像により現場の状況を常時監視でき、安全性が向上する。
ダム堤体のコンクリート打設エリアにローカル5Gの通信環境を整備
自動/自律化運転において工事の品質を保ちながら生産性/安全性を向上するには、リアルタイムに遠隔地の映像受信や運転指示を行うための高速かつ安定した無線通信が不可欠とされる。大林組はKDDIエンジニアリングと連携し、2024年10月にダム堤体のコンクリート打設エリアにローカル5Gの通信環境を整備。2025年2月にケーブルクレーンの自動/自律運転に成功した。地形が複雑で多数の重機が稼働する建設現場への構築は、KDDIエンジニアリング初の事例となった。
ローカル5Gは、通信事業者以外の事業者が特定エリア内に独自ネットワークを構築できる無線通信規格で、4.5GHz帯/28GHz帯を活用する。一般のWi-Fiと比較してエリアが広く、電波干渉が少ないという特性を持つ。
今後はAIを活用した運転制御やコンクリート量の自動計算など、さまざまな施工プロセスへの活用に取り組む。大林組とKDDIエンジニアリングは自律型コンクリート打設システムの高度化を目指すと共に、他事業者との連携による研究開発や現場適用の拡大を進めていく。
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