3Dプリンタで製作したプレキャスト部材と規格品を併用、擁壁工事をフルプレキャスト化 大林組:3Dプリンティング
大林組と日本ヒュームは、国土交通省中部地方整備局発注「新丸山ダム建設工事」の仮設工事用管理施設の擁壁に、規格品と建設用3Dプリンタで製作したプレキャスト部材を適用し、擁壁工事のフルプレキャスト化を実現した。
大林組は2024年12月3日、日本ヒュームと共同で、国土交通省中部地方整備局発注「新丸山ダム建設工事」の仮設工事用管理施設の擁壁に、規格品と建設用3Dプリンタで製作したプレキャスト部材を適用し、擁壁工事のフルプレキャスト化を実現したと発表した。
新丸山ダム建設工事は、岐阜県加茂郡八百津町で大林組を代表者とする共同企業体が施工を担当している。擁壁の直線部には規格化されたプレキャスト部材を、規格化されていない隅角部3カ所には建設用3Dプリンタで製作したプレキャスト部材を適用し、2024年7月に擁壁設置を完了した。
建設用3Dプリンタを活用したプレキャスト部材は、専用の鋼製型枠を製作する場合と比較して、型枠の製作から現場施工までにかかる工程を約30%短縮し、約5%のコスト削減効果も確認した。より複雑な形状のプレキャスト部材ではさらにコスト削減が見込める。
また、建設現場内で型枠を製作し、コンクリートを打設した場合と比べて、現場施工にかかる日数を約20日から1.5日に短縮し、工期を約90%削減可能だ。
堤体内部の監査廊でもフルプレキャスト化を検討
新丸山ダム建設工事では、2025年度以降に着工する堤体工事で、堤体内部の監査廊でもフルプレキャスト化の実現性可能性を検討している。今回と同様、工程の短縮効果が見込める部分には建設用3Dプリンタ製のプレキャスト部材を適用することで、現場の生産性向上を目指す。大林組は今回の組みで得られた知見を生かし、さらに多様な構造物への3Dプリンタの活用を進めるとともに、土木構造物のフルプレキャスト化を推進する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(7):建設DX実現までの指標となる“変革レベル”と、可能性を秘める生成AI【最終回】
連載最終回となる今回は、建設DXをどう進めていけばいいか分からない人の助けとなる“変革レベル”と、DXの要素技術として昨今注目を集めている生成AIについて解説します。 - 大阪・関西万博:大阪・関西万博「大地の広場」で生分解性3Dプリント建築の構造体が完成 竹中工務店
大阪・関西万博の会場敷地内「大地の広場」で、竹中工務店が建築を進めてきた生分解性の3Dプリント建築「森になる建築」の構造体が完成した。2025年4月の完成を目指し、外装工事や緑化工事を進める。 - 3Dプリンティング:材料噴射型3Dプリンティング技術を実工事に初適用、高さ2mのRC柱をオンサイト施工 清水建設
清水建設は、日本製鉄発注の瀬戸内製鉄所阪神地区の製鉄設備建設工事において、材料噴射型3Dプリンティング技術を有筋構造部材の施工に初適用した。 - 脱炭素:既存躯体を活用し減築と増築で改修、大阪避雷針工業神戸営業所が竣工 竹中工務店
既存躯体を活用し、減築と増築を同時に行って竹中工務店が改修した兵庫県神戸市の「大阪避雷針工業神戸営業所」が竣工した。同規模の建物を新築した場合と比較して、建設時のCO2排出量を約70%削減した。 - デジタルファブリケーション:国産建設用3Dプリンタを3300万円で発売、Polyuse
Polyuseは、建設用3Dプリンタ「Polyuse One」の先行受注販売の予約受付を開始した。2025年4月から量産を開始し、同年夏頃に納品する予定で、販売価格は3300万円。 - デジタルファブリケーション:セレンディクスが異なるメーカーの3Dプリンタ3台を3県に導入 多拠点化で生産量倍増へ
3Dプリンタ住宅のセレンディクスは、新たにメーカーなどが異なる3台の3Dプリンタを導入した。3Dプリントの多拠点化を急ピッチで進め、生産量の倍増を目指す。