新丸山ダムの盛土工事で計画〜建機施工〜品質管理の自動化に成功、大林組:建機自動化
大林組は施工計画から品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」を開発した。新丸山ダム工事に適用し、複数建機の自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功した。
大林組は、ダム盛土工事の施工計画から品質管理までを自動化する「統合施工管理システム」を開発し、岐阜県八百津町で施工中の新丸山ダム建設工事に適用したと2024年4月11日に公表した。 現場では、複数建機の自律運転による盛土施工と計測ロボットを使った品質管理を行う実証施工に成功し、施工管理者の施工計画業務を約88%削減した。
施工自動化で盛土施工量は積算基準を上回り、1日当たり285m3を達成
統合施工管理システムは、施工計画を自動作成する建設マネジメントシステム(CMS:Construction Management System)、盛土の品質管理を自動化するAtlasX(アトラスエックス)、建機FMS、品質管理のデータ共有を行う現場ダッシュボードで構成。
このうち、建設マネジメントシステムは、土工事の一連の作業となる積込み、運搬、敷均、転圧の最適な施工計画を自動作成するシステム。設計図書データを取り込み、建機の台数や施工日数を設定すると最適な施工計画を自動作成し、その計画データを建機FMSに伝達する。
建機FMSは、複数台の建機を連動させ、CMSが作成した施工計画をもとに、自律運転を制御する。新機能で、全自動施工、他社開発の自動建機との連携/管理、有人建機と無人建機の連携/管理を追加した。
AtlasXは、転圧ローラーに加速度センサーを取り付けたαシステム、自走式散乱型RIロボット、3Dレーザースキャナの3種類のIoT計測機器を用いて盛土の締固めの品質管理を自動で行う。
今回の実証では、システム間の連携性と各システム機能の生産性向上効果を検証した。
システム間の連携性の検証では、CMSで自動作成した施工計画と座標情報を建機FMSに連携させ、建機への作業指示に活用し、自動運転を行った。一連の作業は現場内にある統合監視室で、施工管理者1人が管理し、バックホウ、ダンプトラック、ブルドーザ、振動ローラーの運転を無人化。その他、有人運転の建機も、建機FMSで自動の作業指示や完了報告を行い現場全体の施工自動化を実現した。
実証施工の結果から、実証施工での盛土の施工量は1日当たり285立方メートルを達成し、土木工事積算基準で同種の建機を使用した場合の日当り標準施工量260立方メートルを上回った。
施工計画や品質管理では、施工管理者1人が20分程度の作業時間で、施工計画を自動作成し、帳票作成の自動化により、施工管理者の労働時間を1日当たり約13%削減した。また、AtlasXによる自動計測で、品質管理データの作成にかかる人員を1人削減し、計測や施工結果を現場ダッシュボードで共有することで、工事関係者の現場と事務所間の移動回数を減らした。
施工管理者の施工計画業務に関しては、盛土量50万立方メートルの施工で試算したところ、約88%削減することを確認した。無人運転の建機台数分のオペレーターの省人化が可能になるため、統合施工管理システムを汎用化し、大規模工事に適用すれば、より生産性向上の効果が大きくなることも見込まれる。
今後、大林組と国土交通省は共同で、骨材製造からコンクリート打設までの工程を自動化する「自律型コンクリート打設システム」を開発し、導入する計画だ。統合施工管理システムの機能向上と現場環境に適合させた改良を行い、コンクリート打設を自動化することで、ダム堤体工事の自動化施工を実現を目指す。
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