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中高層木造建築構法「P&UA構法」による11階建て事務所モデルプランで構造評定取得木造/木質化

東急建設、戸田建設、西松建設などが参画する「P&UA構法共同技術開発グループ」は、P&UA構法を用いた二方向ラーメン架構に耐力壁を併用した11階建て事務所のモデルプランで、日本建築センターの構造評定を取得した。

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 東急建設、戸田建設、西松建設などが参画する「P&UA構法共同技術開発グループ」は、P&UA構法を用いた二方向ラーメン架構に耐力壁を併用した11階建て事務所のモデルプランで、日本建築センターの構造評定を2024年10月11日に取得した。

 評定を取得したモデルプランは新技術を含めた4つの要素技術を採用することで、高耐力/高剛性/高靭性の構造性能を実現。壁が少なく広い空間を有する中高層木造建物の建設が可能となる。

構造評定を取得した11階建て事務所のイメージパース
構造評定を取得した11階建て事務所のイメージパース 出典:東急建設プレスリリース

新技術「ローリング・コッター耐力壁」を採用

 技術開発グループは2022年10月、一方向ラーメン架構、他方向に耐力壁を配置した10階建て共同住宅のモデルプランで、日本建築センターの構造評定を取得している。このモデルプランでは、「GIUA」「シアリング・コッター耐力壁」の2つの技術を活用した。

 GIUAは、中大規模木造で一般的な鋼棒挿入接着接合(GIR)において、鋼棒をあえて接着させないアンボンド部分を設けた接合構法だ。木材割裂を防ぎ、大変形時でも木材を損傷させずに鋼棒が伸び縮みすることでエネルギーを吸収する。柱/梁(はり)へのGIUAの施工は工場で行うため、現場では鉄骨のパネルゾーン(柱梁のジョイント部分)に高力ボルトを使用して緊結するのみとなり、施工を省力化できる。

 シアリング・コッター耐力壁は、VLやCLTなどの木質パネルを上下に並べ、パネル間に設けた切り込みにL型に折り曲げ加工した鋼材(コッター)を組み込んで接続する。耐力壁の上下は鉄骨梁で、鉄骨プレートとボルトによって固定。地震時発生には、パネル間に差し込んだ鋼製コッターが水平逆方向に変形することで地震力を負担して地震エネルギーを吸収する。耐力壁に求められる必要なせん断耐力は、コッター数量を調整することでコントロール可能だ。

GIUA(左)、アリング・コッター耐力壁(右)
GIUA(左)、アリング・コッター耐力壁(右) 出典:東急建設プレスリリース

 今回の11階建て事務所のモデルプランでは、これら2つの技術に加え、新たに開発した「ローリング・コッター耐力壁」と「炭素繊維によるせん断補強」が採用された。

 ローリング・コッター耐力壁は、鉄骨の枠柱の間に木質パネルを左右に並べ、鉄骨枠柱とパネル間/パネル同士の間に設けた切り込みに、L型に折り曲げ加工したコッターを組み合せ、差し込んで接続する。地震発生時には、建物に生じる水平力によって左右に並べた木質パネルが回転するロッキング現象が生じ、鉄骨枠柱とパネル間/パネル同士に差し込まれた鋼製コッターが変形し、エネルギーを吸収する。

 炭素繊維による補強は、ラーメン架構の木梁端部の仕口や梁のスリーブ付き継手に炭素繊維板を貼付し、炭素繊維シートを巻き付けて補強することで、木材の曲げ補強とせん断割裂防止による急激な耐力低下を抑制する。梁のスリーブ付き継手補強に関しては、構造実験において、RC造のスリーブ開口基準(梁せいの1/3まで)を上回る、梁せいの45%までのスリーブ開口を設置できることを確認。S造と遜色ないスリーブ開口の設置も可能だとした。

二方向ラーメン仕口
二方向ラーメン仕口 出典:東急建設プレスリリース
ローリング・コッター
ローリング・コッター 出典:東急建設プレスリリース
炭素繊維による補強
炭素繊維による補強 出典:東急建設プレスリリース
実大実験の様子。スリーブ付き継手梁のクリープ試験(左)、ローリング・コッター耐力壁(右)
実大実験の様子。スリーブ付き継手梁のクリープ試験(左)、ローリング・コッター耐力壁(右)出典:東急建設プレスリリース

 P&UA構法共同技術開発グループに参画する技術開発者は、市浦ハウジング&プランニング(代表)、織本構造設計、東急建設、東レ建設、戸田建設、西松建設、長谷工コーポレーション、三井住友建設。

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