熊谷組と住友林業が“ロシア産材の確保困難”で、KS木質座屈拘束ブレースに国産材含む2樹種を追加:施工
熊谷組と住友林業は、共同で開発した「KS木質座屈拘束ブレース」に国産材を含む2樹種を追加し、新たに構造性能評価を取得した。
熊谷組と住友林業は、2022年に共同で開発した「KS木質座屈拘束ブレース」に国産材を含む2樹種を追加し、新たに構造性能評価を取得したと2023年4月に発表した。ロシア産のダフリカカラマツが入手困難となり、東京電機大学の協力も得て3者で、国産カラマツとラジアータパインも利用可能にした。
構造性能評価でブレースとしては最高のBAランクを取得
KS木質座屈拘束ブレースは木質材料で鋼材を拘束し、安定的な変形性能を発揮する鋼製ブレース。熊谷組が得意とする中高層建物の耐震構造技術と、住友林業の木質系材料に関する豊富な知見や技術を融合して開発した。2022年3月には、建築確認審査機関の日本ERIによる構造性能評価でブレースとしては最高のBAランクを取得。今回、参画した東京電機大学は木質座屈拘束ブレースの耐力をさらに高め、より大規模な建物への適用や設計時の自由度向上への対応も視野に、学術的な観点での知見提供を担った。
KS木質座屈拘束ブレースの座屈拘束材には、密度が大きく強度も高いダフリカカラマツLVL(Laminated Veneer Lumber)と国産の針葉樹合板を使用。国際情勢の変化や国産材利用促進の機運の高まりもあり、開発チームに東京電機大学 笹谷真通教授の研究室を迎え入れ、樹種の活用研究を進めた。実大構造実験を繰り返し実施し、LVLに用いる樹種拡大に成功し、実用化するに至った。
熊谷組と住友林業は脱炭素社会の実現に向けて建物の木造化や木質化を目指し、特に中大規模木造建築の受注拡大のため木質部材に関連する研究や技術開発に力を入れている。熊谷組は仕様提案、シミュレーションによる性能評価、構造実験、住友林業は木材に関する知見の提供、仕様提案・試作、構造実験、東京電機大学は部材構成、実験方法、解析方法のアドバイスを分担。本部材の社会実装に向け、まずは自社の案件などでの適用を積極的に検討していく。
また、利用樹種の拡大により、利便性を高めた本部材をオフィス、商業施設、集合住宅、宿泊施設、物流施設などの鉄骨造建物に加えて、中大規模木造建築にもさらに積極的に導入していく予定だ。
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