住友林業、木造化推進へ混構造建築の梁接合金物を発売 設計業務を省力化:製品動向
住友林業とカナイグループは、木造の小梁をS造やRC造の大梁や柱と接合する混構造用金物を発売した。形状規格化により設計業務を省力化、低コスト化し中大規模木造建築を推進する。
住友林業と木造住宅の建築金物を製造/販売するカナイグループは2024年1月から、木造の小梁(こばり)を、S造やRC造の大梁(おおばり)や柱と接合する混構造用金物を発売した。形状規格化により設計業務を省力化、低コスト化したことで、中大規模建築の木造化を推進する。
構造計算結果に応じた6種類の規格を用意、特注金物に比べて低価格で提供できる
今回開発した接合金物は、木造小梁側の金物形状を規格化したもので、構造計算の結果に応じて6つの大きさから選択可能だ。生産の合理化により、特注金物と比べて大幅にコストダウンした。また、設計者は金物の形状やドリフトピンの太さ、本数などをその都度計算する必要がなくなり、接合部の設計作業を省略できる。
鉄接合部にはS造と共通の高力ボルト接合を使用し、鉄骨梁と同じ組立手順/作業内容で取り付けられる。また、接合金物と木造小梁はプレカット工場で事前に接合するため、現場作業を増やさず施工できる。
ドリフトピンは木梁下端に寄せて千鳥配置とし、木材を下から支えて割裂(かつれつ)破壊の発生を防ぐ。梁幅方向に2列に配置した場合、最大314キロニュートン(短期基準せん断耐力)まで耐えられる。
なお、ドリフトピン接合部は、木材に打ち込んだドリフトピンと接合金物との間に隙間を設けて回転可能な形状とした。これにより、木材の梁や柱との接合部に曲げようとする力が伝わるのを防止する。
この他、接合部の耐火性能を規格化し、第三者機関による性能評価も取得済みだ。
住友林業とカナイグループは既に規格型混構造用金物の量産体制を整えており、今後の受注に対応していく。
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