木造建築現場の物流/施工の効率化を研究する「施工効率化センター」開設 AQ Group:木造/木質化
AQ Groupは、埼玉県上尾市に保有する木造建築技術研究所に、建築現場の物流や施工の効率化に関する研究を行う実証実験施設「施工効率化センター」を開設した。
AQ Groupは2024年12月18日、埼玉県上尾市に保有する木造建築技術研究所に、建築現場の物流や施工の効率化に関する研究を行う実証実験施設「施工効率化センター」を開設したと発表した。人手不足と資材高騰によって物流コストが上昇する中、生産性向上に向けた研究と標準化を推進する。
研究項目は「包装」「輸送」「倉庫保管」「荷役」「流通加工」「情報管理」「SDGs」の7つで、再利用可能な梱包材の開発やトラック以外の輸送方法の研究、簡易ボックスのレンタル利用による費用対効果の検証などを行う。特に、梱包レスの取り組みでは、廃棄物を削減するだけではなく、建設現場で梱包をはがしたり捨てたりする作業の省略にもつながり、生産性の向上も見込めるという。
物流や施工の効率化は木造建築の普及に不可欠
施工効率化センターで展開する研究や実証実験は、木造建築を全国に普及させるために重要な役割を担っているという。AQ Groupでは、地域の工務店や中小ゼネコンとともに、木造建築着工数日本一を目指す建築集団「フォレストビルダーズ」を形成。全国各地にネットワークを拡大しており、物流や施工の効率化、生産性向上は不可欠だ。
また、AQ Groupは約20年にわたり、建築資材の配送システム改革に取り組んでいる。作業の多い建築現場で、資材の荷解きや片付けなどの時間を削減するために、「在来木造ジャストイン配送システム」を開発。必要なタイミングで必要なモノを必要な状態で届け、不要になったものは即座に回収することで、作業員の作業効率を大幅に向上させるともに、ミスやロスを無くして品質も高める取り組みだ。配送センターで大量の梱包を開封、カット、組み立てまで行い、計画的に配送する仕組みにより、建築現場の精度向上を実現し、消費者に品質の高い住宅を安価で届けることが可能になった。
また、近年は戸建て住宅の不要な壁や柱を取り除き、大空間や吹き抜けを実現させる「AQダイナミック構法」と、普及型木造ビルを低コストかつ短納期で建築する「木のみ構法」を実践。これらを適用した建物についても、建築の際に資材の供給が重要で、現場に配送する順番によって施工の効率性も大きく変わる。施工効率化センターは、AQダイナミック構法、木のみ構法の技術を標準化させながら全国に展開し、建築現場施工の効率化を図る。
木造建築技術研究所の敷地面積は1万5000平方メートル超。戸建て住宅から中大規模木造建築の技術革新の加速を目指し、活用している。2024年6月には「構造実験棟」が本格稼働。住宅用一般流通材を使用し、最小限の部材で構成された合理的な木造トラス(AQトラス)による512平方メートルの無柱大空間で、坪単価は40万円以下。
今回本格稼働した施工効率化センターでもAQトラスを採用し、704平方メートルの敷地面積を確保。建物基礎や外壁、屋根まで住宅用一般流通材を使用し、坪単価28.2万円を実現した。構造は平屋建て、純木造軸組工法。
構造実験棟と施工効率化センターはともに、安価で建築可能な普及型中大規模木造のプロトタイプと位置付けている。
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