建設業の倒産件数が過去10年で最多ペース、人手不足や人件費高騰が経営を圧迫:調査レポート
帝国データバンクの調査によると、2024年1〜10月に発生した建設業の倒産は1566件になり、8年ぶりの高水準を記録した前年をさらに上回るペースで推移している。建設現場での人手不足や求人難に伴う人件費の高騰などが中小建設業者の経営を圧迫しており、通年では過去10年で最多を更新する見込み。
帝国データバンクは2024年11月3日、2024年1〜10月に発生した建設業の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が1566件になったと発表した。8年ぶりの高水準を記録した前年をさらに上回るペースで推移していることが分かった。建築資材価格の高止まりや、建設現場での職人不足と求人難に伴う人件費の高騰などが中小建設業者の経営を圧迫しており、通年では過去10年で最多を更新する見込み。
再開発事業が都市部を中心に活発化している他、災害復旧工事などで工事需要が旺盛な一方、2024年4月から残業時間の上限規制が導入されたことによって、建設現場の人手不足は深刻化している。
帝国データバンクの調査によると、人手不足感を抱える建設業の割合は2024年9月時点で69.8%に上るなど高水準で推移。人件費の高騰にも影響しており、2024年7月の現金給与総額は前年同月比で約10%上昇し、全産業を上回る高い伸びが続く。また、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の転職や退職により、事業運営が困難になった「人手不足倒産」も前年を上回るペースで推移している。工期の延長や後ろ倒しといった悪循環が発生しやすい環境が、中小建設業の倒産件数を押し上げる要因の1つとなっているという。
帝国データバンクは、足元では戸建て住宅などの価格高騰や金利上昇を背景に「住宅着工が振るわない」といった企業もあり、内外からの賃上げ圧力にさらされるなかで、賃金引き上げ余力に乏しい中小零細規模の建設業で倒産増が続く可能性が高まっていると解説した。
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