2024年度の設備投資は4年ぶりに前年比割れ「人的投資を優先」の声も、TDB調査:調査レポート
帝国データバンクが公表した2024年度の設備投資に関する意識調査結果によると、予定している企業は、前年調査と比較して4年ぶりに減少したことが分かった。企業規模間で差が表れ、大企業では積極投資の姿勢だが、中小企業では建設費用をはじめとする設備費の高騰を懸念する回答が多く、人的投資を優先するとした企業もあった。
帝国データバンクは、2024年度(2024年4月〜2025年3月)の設備投資に関する企業の意識調査結果を2024年5月23日に発表した。
「設備の代替」が58.9%で最多、省力化投資やデジタル投資などが上位に
2024年度に設備投資を実施する予定があるかとの質問に「ある」(「既に実施した」「予定している」「実施を検討中」を合算)と回答した企業は、全体の58.7%を占めた。前年の調査と比べて、1.8ポイントの減少となり、前年から減少したのは4年ぶりとなる。
2024年度に設備投資を計画している企業の設備投資予定額は、平均で1億2705万円で、前回調査から約235万円増額した。
一方で、設備投資を「予定していない」企業は33.1%で、前回調査から2.0ポイント上昇した。理由としては、「先行きが見通せない」(44.1%)、「現状で設備は適正水準である」(26.9%)、「投資に見合う収益を確保できない」(21.4%)、「借り入れ負担が大きい」(13.8%)、「手持ち現金が少ない」(13.5%)、「自社に合う設備が見つからない」(13.4%)など、物価上昇に伴い設備費用の高騰を危惧する意見が多かった。
企業の規模別では、設備投資を予定している大企業がコロナ禍以前を上回る割合となったが、中小企業や小規模企業の割合は減少傾向にある。小規模企業では、人的投資を設備投資よりも優先しているといった声が寄せられた。
設備投資の内容は、「設備の代替」が最も多く58.9%。次いで「既存設備の維持/補修」(29.8%)、「省力化/合理化」(25.7%)、「DX」(24.8%)、「情報化(IT化)関連」(22.2%)の順。
設備投資の資金調達方法では「自己資金」(57.1%)が最も多く、その次に金融機関からの「長期の借り入れ」(22.0%)、「短期の借り入れ」(6.7%)だった。
帝国データバンクは調査結果を受け、「原材料価格の高止まりに起因して、建設費用をはじめとする投資費用の増大や金利の上昇動向などで、当初予算を大幅に上回ったり、完成時期が後ろずれしたりするなどの懸念から投資計画の中止、見直し、先送りするケースもでてきそうだ」と予測している。
今回で8回目となる設備投資に関する調査は、2024年4月16〜30日の期間で実施した。全国2万7502社を対象とし、うち1万1222社が回答した。
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