建設業でも14.5%が「カスハラ」被害に 企業の対応策は:調査レポート
帝国データバンクは、全国の企業を対象にカスタマーハラスメントに関する調査を実施し、直近1年で15.7%の企業が被害にあっていることを明らかにした。建設業は14.5%だった。
帝国データバンクは2024年7月23日、全国の企業2万7159社(有効回答企業数1万1068社)を対象にカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する意識調査を実施し、直近1年でカスハラの被害があったと回答した企業が15.7%を占めたと発表した。業界別では、主に個人を顧客とする小売業で被害が最も多く34.1%、建設業は14.5%だった。
約2割の企業で「カスハラに該当するか分からない」
調査では、直近1年以内に自社もしくは自社の従業員がカスハラや不当な要求などを受けたことがあるかを聞いた。
規模別では、大企業が21.0%、中小企業が14.8%、小規模企業が14.4%だった。業界別では、小売業がトップで、金融業の30.1%、不動産業の23.8%、サービス業の20.2%と続いた。規模が大きい企業ほどカスハラ被害が多く、個人を取引の対象とする業界で比較的高い割合となった。
一方で、「分からない」と回答した企業が全体で18.8%と、一定数存在することも判明した。回答した企業からは「どこまでの発言や行為がカスハラに該当するのか不明」(情報サービス/東京都)など、判断の難しさを訴える声が多く聞かれた。この他「B2Bの事業会社であり、表立ったカスハラ経験がなく、遭遇する機会もない」(建材、家具、窯業、土石製品製造/愛知県)など、そもそもカスハラなどを受ける状況がないといった意見もあった。
カスハラ対応の有無はほぼ半々、取引停止などの対応を取る企業も
カスハラや不当要求などへの対応として、何らかの取り組みを行っていると回答した企業は50.1%、特に取り組んでいない企業は47.4%で、ほぼ二分する結果となった。
具体的な取り組みでは、電話に録音機能を付けるなど「顧客対応の記録」が20.1%で最多。次いで、「カスハラを容認しない企業方針の策定」が12.3%、「カスハラ発生時のサポート体制の構築」が9.6%、「被害者への相談/通報窓口の設置」と「警察や警備会社、行政との連携」が8.2%の順だった。
企業からは、「顧問弁護士と迅速な連絡/相談できる体制を整えている」(旅館、ホテル/神奈川県)や「カスハラをしてきた企業との取引を停止した」(建設/香川県)など、毅然とした態度でカスハラに対応する声も寄せられた。
近年は不当なクレームや嫌がらせ、ネットへの一方的な悪評の書き込みなどにも対応せざるを得ない事象が発生している。調査では、被害を受けた企業だけでなく、まだ受けていない企業でも、従業員の働きやすい環境や円滑な商取引を維持するためのカスハラなどへの対策を整える必要があると指摘している。
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