エッジAIを搭載した6台のロボットが協力して「システム天井」を施工、テムザックと鹿島が共同開発:ロボット(2/2 ページ)
テムザックは2024年7月17日、鹿島建設と共同開発を進める「システム天井施工ロボット」を公開した。エッジAIを搭載した6台のロボットが「群れ」として働き、躯体から天井を吊るす「吊りボルト」の設置、天井ボードを載せる「Tバー」の取り付け、仕上げの「天井ボード」の設置まで幅広い施工範囲をカバーする。
各ロボットの役割
デモンストレーションでは、各ロボットの役割と、実際の動作が実演された。
吊りボルト施工ロボットは、天井を吊り下げるための吊りボルトの運搬と、天井に設置されたインサートを自動検出して取り付ける作業を担う。取り付けを行う際は、ロボットに積んだ吊りボルトを1本取り出して自らアームにセットする。
天井に設置されている梁(はり)や設備、ケーブルなどを識別しながら、吊りボルトが取り付けられるかを判断。ダクトなどに接触の危険性がある箇所は施工不可と判断し、施工せずに次の場所に移動する。
施工対象となるシステム天井用のインサートは白色の金具だが、実際の現場では、照明用など施工内容が異なる緑や黄色の金具も存在する。施工すべき場所かどうかの判断については、機械学習を活用し、白色の金具のみを正確に識別できるようにした。
Tバー施工ロボット(メイン)は、天井の格子状の骨組みとなる3種類(短、中、長)の長さのTバーのうち、最も長いバーを3台が連携して組み上げる。1台目はTバーを運搬し、吊りボルトとTバーを金物で固定する。2台目は、長いTバー同士を長手方向に連結して固定。最後の1台は、Tバーに残りの吊りボルトを固定する。Tバー同士の連結を行う際は、ロボット同士が自身やTバーの位置情報などを共有しながら作業を行っている。
また、Tバー施工ロボット(サブ)は、3種類のバーのうち、短いバーと、中間の長さのTバーの運搬と施工を担う。長いバーの間に中間の長さのバーを固定し、短いバーは中間の長さのバーの間に入るように押し込み、固定する。全てのTバーを組み終わると、格子状の骨組みが完成する。
天井施工ロボットは、格子状に組み上がった骨組みに天井ボードを設置する。数種類の距離センサーにより、骨組みとの位置関係や天井裏の吊りボルトなどの障害物を認識して、ボードの差し込み方向や設置位置を調整。また、天井ボードは裏と表が交互にパッケージされているため、ロボットは必ず一度天井ボードを持ち上げて台座に置き、表面を掴みなおしてから差し込みを行うことで、表裏の間違いを防止する。
今後も完成に向けて開発を継続
ロボットには主に、工場の自動化を目的とした「産業ロボット」と、床清掃や警備など一般の人がいる場所で人を支援する「サービスロボット」がある。テムザックは、サービスロボットのうち、人手が足りない現場で人に代わって活躍する実用性を備えた自社のロボットを「WORKROID(ワークロイド)」と称して開発を進めている。
川久保氏は「建設現場向けと一口に言っても、建物の種類や施工場所などによって求められる機能は大きく異なる。また、産業ロボットのようにライン上で作業を行うわけではなく、ロボットが自ら移動して作業を行う必要があり、さまざまな環境下で支障なく動けるロボットを開発する必要があった」と話す。
既に国内の鹿島建設のオフィスビル建設現場で、複数回の試験施工を実施している。今後も完成に向けて開発を継続し、改良を重ねていく。
さらに、建設現場だけではなく、農業用やインフラ調査用などさまざまな分野に転用できる技術のベースとして活用し、世の中で解決できない課題をロボット技術で解決していきたいと意気込みを見せた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024:道路のマーキングロボや芝刈りロボにも活用、NTT Comの高精度測位サービス
NTTコミュニケーションズは、RTK-GNSS測位技術を活用した手のひらサイズの端末による高精度位置情報サービス「Mobile GNSS」を2023年10月から提供している。地上にある基準局と衛星から取得した位置データを利用し、誤差数センチの高精度の測位を実現し、建設現場のデジタルツインをはじめ、舗装工事のマーキング自動ロボットやAI搭載の芝刈りロボットにも使われている。 - 製品動向:非木造建築の窓施工をロボットで自動化、YKK APが窓枠設置/自動溶接ロボを開発
YKK APは非木造建築の建設現場で窓の施工を自動で行うロボットシステム「MABOT(マボット)」シリーズを発表した。今回、窓枠を正確な位置に設置する「Alignmenter01」と、設置した窓枠を自動溶接固定する「Welfixer01」の2種を発表している。 - デジタルファブリケーション:セレンディクスが異なるメーカーの3Dプリンタ3台を3県に導入 多拠点化で生産量倍増へ
3Dプリンタ住宅のセレンディクスは、新たにメーカーなどが異なる3台の3Dプリンタを導入した。3Dプリントの多拠点化を急ピッチで進め、生産量の倍増を目指す。 - ロジスティクス:南埼玉で大和ハウスが延べ5.8万m2物流施設に着工 イオンネクストの「Green Beans」専用に
大和ハウス工業は埼玉県南埼玉郡宮代町で、コールドチェーン(低温物流)を支える3温度帯(常温、冷蔵、冷凍)の設備を有する物流施設「DPL久喜宮代II」を開発する。2027年度の施設稼働後は、イオンネクストのネットスーパー「Green Beans」の専用施設となるコトが決定している。 - 第6回 建設・測量生産性向上展:洗浄機の「ケルヒャー」が建設現場向けに清掃ロボ! 大成建設が導入したそのスペックは?
家庭用や業務用の高圧洗浄機で知られるKarcherは、建設業界向けにも用途に応じた多種多様な清掃製品を展開している。2023年に発表した床洗浄ロボットは既に大成建設が導入を決め、薬品ではなく熱湯による除草システムは日本ロード・メンテナンスの道路清掃で使われているなど、現場で徐々に普及しつつある。 - 第6回 建設・測量生産性向上展:課題は人材不足だけではない! 立命館大 建山氏が説く「DX時代に必要な建設産業の姿」
CSPI-EXPO 2024の特別セミナーに、立命館大学 総合科学技術研究機構 教授 建山和由氏は登壇し、急激に変化する建設業界を取り巻く状況や今後求められる建設産業の在り方を示した。 - 通信環境:建設現場のデータ通信網を完全無線化、Starlinkなど活用 竹中工務店
竹中工務店は、建設現場でのデータ通信網の完全無線化を実現し、通信網構築にかかる時間を約8割削減した。今後は実用化に向けて無線技術をパッケージ化し、建設現場へ普及させていく。 - ロボット:鉄道線路内でUnitree製犬型の「四足歩行ロボ」実証、日本電設
日本電設工業は、現場作業員の負担軽減と省人化を目指し、鉄道線路内で四足歩行ロボットの活用に向けた実証実験を始めた。 - BAS:東京駅前の三菱電機ビルソリューションズ新ショールームを視察 スマートビルの技術を一堂に
2022年に三菱電機のビルシステム事業と、三菱電機ビルテクノサービスが経営統合して、発足した「三菱電機ビルソリューションズ」。エレベーターやエスカレーターなどのビル設備を販売するだけでなく、施工や保守、改修までのライフサイクルをカバーするワンストップサービスを展開している。今般、東京駅の目の前に位置する本社ビルに、最新のビルソリューションを展示するショールームをオープンした。顧客とビジョンを共有しながら、サステナビリティやスマートビルなどにつながる共創を目指す、新ショールームを見学した。 - 第6回 建設・測量生産性向上展:Starlinkで建設現場を「ネットが当たり前につながる」環境に アクティオの「レンタル+コンサル」製品群
山間部の道路やダム工事、屋内の建築現場では、十分な通信を得られないケースが多く、建設現場のデジタル化を妨げる一因となっている。建設機器のレンタルを幅広く手掛けるアクティオは、建設現場の「ネットにつながらない」課題を解決すべく、約5000基もの衛星で日本中をカバーし、「当たり前にネットにつながる」通信環境の提供を開始する。