課題は人材不足だけではない! 立命館大 建山氏が説く「DX時代に必要な建設産業の姿」:第6回 建設・測量生産性向上展(1/3 ページ)
CSPI-EXPO 2024の特別セミナーに、立命館大学 総合科学技術研究機構 教授 建山和由氏は登壇し、急激に変化する建設業界を取り巻く状況や今後求められる建設産業の在り方を示した。
立命館大学 総合科学技術研究機構 教授 建山和由氏は、「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」(会期:2024年5月22〜24日、幕張メッセ)の特別セミナーで、「DX時代の新しい建設産業に向けて」と題して講演した。
人口減による税収減少でインフラ投資が縮小、技術ノウハウの消失も課題
建設業界が変化している要因として建山氏が挙げるのは、極端な人手不足だ。これまで増加を続けてきた日本の人口は、2007年をピークに減少に転じた。一般的には、そこを分水嶺に「高齢化社会」に移行したとされているが、実は高齢者が急激に増えたわけではない。問題なのは、15〜64歳までの生産年齢人口が大きく減少したことにある。
日本の生産年齢人口は、2020年を起点とすると30年で約30%が減少。生産年齢人口の減少が建築業界に与える影響は、単に担い手が不足するということだけでは済まない。生産年齢人口が減ればおのずと税収も減少する。高速道路や地方道などインフラの利用者も減るので、結果として将来の公共工事への投資予算も縮小が見込まれる。
しかし、新規インフラ投資に比べ、既存構造物に対する維持や補修の割合は増えることになる。インフラの維持管理では、不具合や劣化などの状態が一律ではないため、工事前に原因を調査して補修方法を決定し、適切な人材を手配しなければならない。工事自体は、建物やインフラを使いながら、道路であれば一般の自動車を通行させつつ通行を止めずに進めなくてはならない。
自然災害でも難しい対応が迫られている。昨今は、1時間あたり50ミリを超える大雨の発生件数も増加傾向にある。日本では、地震や火山といった自然災害で被害が激化しており、対応が急務となっている。
これまでの防災は、過去に発生した最大の災害に耐えることを基本に考えられてきた。だが、昨今は過去の事例を大きく上回る被害が頻出してしまっている。そのために、今まで以上に資金と人材、技術の投入が必要となるのは明白だ。
建設業は、天候などで屋外作業ができなくなるなど不確定要素が多い仕事だ。だが、熟練者であれば、これまでの経験や勘に基づき、現場の状況に合わせて柔軟に対応して、作業を進められる。しかし、熟練の技術者が高齢化によって減少すると、これまでのような柔軟な仕事の進行が難しくなる。インフラ投資予算の減少と仕事内容の高度化が同時進行する中で、知識と技術を持った熟練者が減少するという時代が迫っている。
建山氏は、「人口減とともに税収も減り、インフラ投資予算も確保しなければならなくなる。にもかかわらず、修繕や更新、災害対策の強化といった今まで以上に難しい工事をこなす必要性が生じている。人も金も限られていく中で、難しい工事をこなすことが求められる時代になってきている」と話す。
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