トンネル坑内作業の状況を画像解析AIが判定、施工管理業務を効率化 清水建設が開発:山岳トンネル工事
清水建設は、山岳トンネル工事の施工管理業務を効率化する情報共有ツール「AIサイクル自動判定システム」を開発した。Webカメラのライブ映像からトンネル坑内作業の状況を画像解析AIで自動判定し、チャットツールを通じて施工関係者へリアルタイムに展開する。
清水建設は2024年5月21日、山岳トンネル工事の施工管理業務を効率化する情報共有ツール「AIサイクル自動判定システム」を開発したと発表した。Webカメラのライブ映像をもとにトンネル坑内作業の状況を画像解析AIが自動判定し、チャットツールを通じて施工関係者へリアルタイムに展開する。
新システムは、ネットワークカメラ、高速通信網、解析用PC、クラウドストレージ、チャットツールから成る。トンネル切羽の後方に設置したネットワークカメラの映像をもとに、解析用PCに搭載したAIが切羽付近の作業内容を自動判定する。判定結果はクラウドストレージに転送し、チャットツールを介した情報共有や、作業記録の自動作成に使用する。
清水建設は、新システムによる生産性向上効果を検証するため、東京都八王子市と神奈川県相模原市を通る「中央自動車道新小仏トンネル工事」(工事延長4077メートル、トンネル掘削工2298メートル)と、富山県南砺市の「利賀トンネル(1工区)工事」(トンネル延長1368メートル、トンネル掘削工1350メートル)の2現場に試験導入した。その結果、現場職員の坑内待機時間を約4割削減し、システムの有効性を確認した。
山岳トンネル施工データプラットフォームを活用
清水建設では現在、中央自動車道新小仏トンネル工事(工期2020年9月〜2026年5月)で、新システムの導入と併せて、現場で取得する施工データを集約/一元管理する「山岳トンネル施工データプラットフォーム」を活用したデータドリブン型の施工管理を試行している。
プラットフォームには、切羽の地山状況や変位量などの施工データを蓄積する他、従来は現場職員が手作業で行っていた施工データの整理や図表化などを自動で行うプログラムを導入し、施工管理業務の省力化を図った。切羽の岩判定業務を対象に帳票作成の自動化を試みたところ、担当職員の業務時間を約8割削減した。
今後はプラットフォームに蓄積されるリアルタイムの施工データを活用して、異変の早期発見や現場内での情報展開につなげ、現場の安全性をさらに向上させる。
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