永平寺と清水建設が重要文化財19棟のデジタルツイン制作:デジタルツイン
清水建設は、開創から約800年が経過する福井県吉田郡の曹洞宗大本山「永平寺」で、重要文化財19棟の精緻なデジタルツインを制作した。
清水建設は2024年4月26日、福井県吉田郡の曹洞宗大本山「永平寺」と共同で、3次元点群測量により、永平寺伽藍(がらん)内にある重要文化財19棟の精緻なデジタルツインを制作し、作成したデジタルデータを永平寺に納品したと発表した。
併せて、清水建設のアプリ「デジトリ360」を使用して伽藍内全棟と大小100余棟を360度写真でウォークスルーできるデジタル空間と、オンラインで永平寺を巡る「デジタル参拝」のコンテンツを制作し、2023年11月に先行して納品した。
日本の歴史的建造物は木造で、これまで多くが焼失し、地震による損壊も少なくない。開創から約800年が経過する永平寺も過去に複数回の火災に遭遇し、関係者の尽力により再建されてきた。永平寺は、デジタルツインにより、伽藍内の重要文化財を確実に後世に残すことができるとの判断から、2023年7月、清水建設との共同調査に乗り出した。
調査では、重要文化財19棟の内外観や、小屋裏や床下、彫刻など、あらゆる空間/形状を3次元点群測量で捉え、任意の平面、立面、断面を切り出して表示できるようにデータ加工し、デジタルツインを構築した。測量にあたっては、デジタル技術に長けた宮大工を擁するT&I 3Dの協力を得た。
永平寺で伽藍の維持保全を担う直歳(しっすい)の石田純道氏は「修行の場である永平寺伽藍内の建造物群の姿を確実に後世に残すことはわれわれの使命だ。精緻なデジタルツインの作成はこのニーズを具現化する手段だと評価している。また、平面の図面から維持保全に必要な情報を得るのは難しいが、デジタルツインのデータからは誰でも必要な情報を容易に検索できるため、維持保全業務を効率化できる」と述べている。
デジタル技術を用いたアーカイブ化を関係各方面に提案へ
国内には、図面類が十分に整備されていない神社仏閣などの歴史的建造物が数多く存在する。これらの建造物でも、デジタル技術を活用することで、合理的な費用と工期で図面類を整備できる。清水建設は今後、デジタル技術を用いたアーカイブ化を、関係各方面に提案していく。また、点群データの高度利用に向け、データを簡易保存/閲覧するアプリケーションや、3次元モデル、構造検討に展開するシステムの開発などを推進する。
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