AIの需要予測で街区全体の熱を融通、清水建設がイノベーション拠点に導入:AI
清水建設は、街区内の各棟に分散配置した熱源群を1つの熱源システムとして統合制御することで、搬送動力も含めエネルギー利用を最適化する街区熱融通システムを開発した。
清水建設は2024年3月28日、複数の建物間で冷水や温水などの熱媒を融通し合い、街区全体でエネルギーを有効利用するシステム「ネツノワ」を開発したと発表した。既に東京都江東区の自社イノベーション拠点「温故創新の森NOVARE(ノヴァ―レ)」に導入し、用途が異なる4棟間の熱融通モデルを構築した。各棟に分散配置した、電気/ガス熱源、水蓄熱槽、ガス/水素コージェネレーションシステム、太陽熱利用システム、地中熱利用システムなどを統合制御することで、エネルギー消費量とCO2排出量の削減を目指す。
AI機能搭載のCEMSを導入し、街区全体の運転効率を最大化
ネツノワは、街区内の建物群に分散配置した熱源機器を熱融通配管で連携するとともに、AIを搭載したCEMS(Community Energy Management System)により各棟の熱需要を高精度に予測することで、街区全体の運転効率を最大化する。
CEMSに搭載したAIは、過去のエネルギー利用実績や気象予報、建物の利用状況の他、建物内の人の位置情報なども加味して熱負荷を予測する。日中など熱負荷の高い時間帯には建物の自己熱源を優先運転して搬送効率を最適化。夜間や土日などの低負荷時には熱源の運転台数を減らし、効率の高い熱源機器に製造を集約することで効率化を図る。
ネツノワの熱源システムは、電気とガスを併用する高効率熱源機、太陽熱や地中熱を利用する再生可能エネルギーシステム、発電時の排熱を熱エネルギーとして利用するコージェネレーションシステムなどを組み合わせることで、エネルギー効率を高める。また、熱負荷特性の異なる建物が熱源システムを共用することで、各建物の設備容量を低減でき、イニシャルコストや設備スペ―スの削減につながる。
清水建設の試算によると、熱源の3割に再生可能エネルギーと未利用エネルギーを導入したネツノワのモデルケースでは、熱源消費エネルギーと熱搬送消費エネルギーの削減効果は約20%になるという。
清水建設は今後、NOVAREを、複数施設をネットワーク化して都市全体でゼロ/エネルギーの実現を目指す「ネット/ゼロ/エネルギー/ソサエティ(ZES)」に関する要素技術の実証や、社外のパートナーとの技術共創の場として活用していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマートコンストラクション:ブルドーザー自動運転システムを構築、自律施工型建機の開発を推進 清水建設
清水建設と自動車部品メーカーのボッシュエンジニアリング、山崎建設は共同で、盛土工事に使用するブルドーザーの自動運転システムを構築し、実機を使用して運転制御や物体検知、緊急停止などの要素機能の実効性を確認した。今後、ブルドーザーの環境認識機能を高度化し、自律施工型ブルドーザーの開発を進める。 - スマートシティー:豊洲スマートシティーをAR空間に3Dジオラマで再現 清水建設とアップフロンティアが共同開発
アップフロンティアは、清水建設が参画する「豊洲スマートシティー」を3Dジオラマで再現した「豊洲Diorama Vision」を清水建設と共同開発した。3DジオラマはARで都市探索でき、スポット情報や推奨する観光コースを表示し、音声案内も備える。 - 製品動向:LTE搭載屋外向けクラウド録画カメラにエッジAI実装 人物を検出/カウント
セーフィーは電源のみで設置可能なLTE搭載の屋外向けクラウド録画カメラに、人物検出/人数カウント機能を備えた新モデルを追加する。建設現場全体の進捗管理や稼働人数の最適化、公共空間の交通量調査などに活用できる。 - “アナログ規制緩和”に対応:清水建設とアイダ設計が全社標準で導入、1台で現場全景を遠隔巡視するカメラ「Safie GO 360」
建設現場向けにクラウド録画カメラを展開するセーフィーは、固定設置型の定点観測カメラ「Safie GO」シリーズに、建設現場全体を1台で撮影する「Safie GO 360」を追加した。撮影した広角の映像は、360度上下左右に動かせ、隅々まで取り逃しがなく、施工品質の確保や労働災害防止に役立ち、2024年問題の解決や同年6月にも解禁される遠隔巡視に対応した建設ICTツールとなっている。 - 新工法:清水建設、鉄骨梁の側面を薄肉化 鉄骨量を3割縮減する補剛工法
清水建設は鉄骨造建物の鉄骨梁のウェブ(側面部分)を薄肉化して鉄骨量の縮減を図る補剛工法「エコウェブ工法」を開発した。既開発を含めた全5工法をシリーズ化し、鉄骨造建物の梁部材で最適化を図る。 - メタバース:メタバース空間で建物の諸検査を行うシステムを開発、清水建設
清水建設は、施工中の建物を再現した仮想空間の中に入ることで、遠隔地から建物の諸検査を行えるメタバース検査システムを開発した。3D点群モデルと設計BIMデータを融合させたメタバース空間で、施工中の建物が設計通りか、遠隔検査が可能になる。