山岳トンネル工事の吹付厚さをリアルタイムに計測管理する技術を開発:施工
戸田建設、エフティーエス、清水建設、西松建設、前田建設工業は共同で、山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム」を開発した。エフティーエスは同システムを搭載した新型吹付機「ヘラクレス-Navigator」の普及を図る。
戸田建設、エフティーエス、清水建設、西松建設、前田建設工業は共同で、山岳トンネルの「吹付ナビゲーションシステム」を開発した。エフティーエスは、同システムを搭載したエレクター付吹付機「ヘラクレス-Navigator」の普及を図る。
国土交通省は「i-Construction」による生産性向上を推進、厚生労働省は、山岳トンネルのコンクリート吹付作業の本質的な安全対策として、遠隔施工の技術導入の検討を求めている。
同共同開発チームは、2018年より各社で分担し、山岳トンネル工事におけるコンクリート吹付作業を遠隔自動化する技術を探索し、検証してきた。
同システムは、生コンクリートの吹付面までの距離を正確にリアルタイムに測定するミリ波レーダ、ミリ波レーダの座標位置を正確に測量するモーションキャプチャ、吹付ノズルを稼働制御する技術、および、山岳トンネル施工坑内での機械測位システムで構成される。これらにより、吹付コンクリート出来形のタブレットなどでのリアルタイム可視化、施工操作と出来形のリアルタイムなデジタル管理が行える。
ミリ波レーダ技術は、吹付ノズルの周囲に取り付けたレーダ群からミリ波を吹付面に照射し、その反射波を捕捉して距離を測定する。錯乱・減衰しやすいレーザー光とは異なり、レーダ波が生コンクリートの霧や塵を透過し、作業中の厚さ変化を高精度なデジタル値で捉える。
モーションキャプチャーカメラは、吹付中のノズル位置計測に応用可能、IP55クラスの防水防塵仕様を施している。新開発の吹付機は、PLCを用いるよりもスムーズに制御稼働できるという。
2021年8月、西松建設JV施工の「福岡201号筑穂トンネル新設工事」で1号機、戸田建設で2号機が導入され、実施工で本格稼働を開始した。
2023年3月、前田建設工業ICI総合センター模擬トンネル内にて現場条件を再現し、システムの検証を実施した。今後は、販売に向けて準備を進めるという。
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