1つのシステムで異なるトンネル断面形状に転用可能な新たな養生システム、西松建設ら:山岳トンネル工事
西松建設と大嘉産業は新しい養生システムを開発した。新しい養生システムは、直径150ミリの小径バルーンで把持した極薄のポリエチレン製シートで覆工コンクリート表面を覆って養生するもので、1つのシステムで異なるトンネル断面形状に転用できるのが特長だ。今後、両社は、使用資材の耐用性を確認するとともに、架設・撤去を含めた施工方法の改良を進め、2021年度中の早期実用化を目指す。
西松建設と大嘉産業は、横浜国立大学 教授 細田暁氏の着想から考案した、トンネル覆工コンクリートの新しい養生システムを開発したことを2021年3月26日に発表した。
表面吸水速度も断面脚部で3分の2以下に抑制可能
近年、山岳トンネルの覆工コンクリート工事では、コンクリート品質を向上させる封緘(ふうかん)養生や給水養生をするために、架台を組みシートで覆ったり、シートを貼り付けたりするなど、さまざまな養生方法が導入されている。
しかし、大規模な架台を用いる養生では、異なるトンネル断面に転用することが難しく、導入費用も高額になる。また、養生シートを貼り付ける方法では、トンネル延長が長くなると大量の廃棄物が発生する。そこで、1つのシステムで多様なトンネル断面に適用でき、導入費用も安価な養生技術が求められている。
上記のような状況を踏まえて、西松建設と大嘉産業は新しい養生システムを開発した。新しい養生システムは、直径150ミリの小径バルーンをトンネル断面方向と軸方向に配置した構造で、厚さ0.36ミリのポリエチレン製シートを覆工コンクリート表面に押し当てて保湿・保温養生を行う。専用の装置を使うことで、小径バルーンの長さを変化させられ、多様なトンネル断面に適用することも可能。大掛かりな架台を必要としないため、導入費用も抑えられる。
西松建設は、同社で施工中のトンネル現場に新たな養生システムを試験導入し、養生による保湿・保温性や覆工コンクリートの品質向上効果を検証した。なお、現場では、コンクリート打込み後、材齢22時間で型枠を取り外し、その後、材齢9日まで養生を実施。
この条件で、新たな養生シートを測定した結果、湿度が約70%の環境で、養生中のシートと覆工コンクリートとの間で生じた相対湿度は90%以上で、特に天端部では100%相対湿度が保たれていた。養生をしない場合と比較して5度以上高い温度を保持し、保温効果も認められた。
さらに、コンクリート表層の品質を天端、肩部、脚部で非破壊試験により調べた結果、表層透気試験による透気係数は無対策箇所よりも40%以上小さく、養生による緻密化の効果も見られた。SWAT試験による表面吸水速度も断面脚部で3分の2以下に抑えられ、コンクリートの品質向上に有効なことが判明した。
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