建機と作業員の接触を防ぐ「人物段階検知システム」、危険エリア侵入者に2段階で警報:山岳トンネル工事
鴻池組とニシオティーアンドエムは、山岳トンネル工事で使用する建機向けに、建機接触防止装置「人物検知システムHADES」を改良し、建機との接触リスクが高いエリア「危険域」だけでなく、危険域手前の「警戒域」に侵入した作業員にも警報を鳴らせる「人物段階検知システム」を開発した。今後、クレーンやフォークリフトなど多様な汎用建機にも取り付けていくとしている。
鴻池組とニシオティーアンドエムは、ニシオティーアンドエムの建機接触防止装置「人物検知システムHADES(Human Approach Detection Emit a Signal device)」を改良して、「人物段階検知システム」を開発した。
身体の一部や特殊な姿勢でも作業員の存在を検知
山岳トンネル工事では、建機のオペレーターが、約20ルクスの明るさの中で、さまざまな建機が走行する中、作業を行うため、十分な視野が確保できず、建機とスタッフが接触するリスクがある。
坑内での作業員と建機の衝突事故を防ぐため、さまざま会社が建機接触防止装置として、スタッフと建機にセンサーを取り付けるシステムやステレオカメラや赤外線センサーを用いて建機と作業員の距離を検知して識別するシステムを開発している。
しかし、スタッフと建機にセンサーを装着するシステムは、一般歩行者の検知が困難で、ステレオカメラや赤外線センサーを使用したシステムは、システム自体が高価で既存建機に後付けできないものが多く、対象者の姿勢によっては誤認識するなど検知精度にも課題があった。
解消策として、鴻池組とニシオティーアンドエムは、人物段階検知システムを開発した。人物段階検知システムは、建機に取り付けたAIカメラを用いて、建機との接触リスクが高いエリア「危険域」に侵入した人物を認識して、重機を自動停止させる人物検知システムHADESを改良し、危険域の前に設けた「警戒域」に侵入した人物に対しても警報を発令する。
新システムは、制御ユニットや4台の単眼カメラ、監視モニター、ブザー付き積層ランプから成り、既存建機の後付けに対応している。建機に備えることで、オペレーターと作業員は危険域に侵入する前から、建機への接近を双方で認識できるため、建機の接触リスクを減らせる。
また、比較的安価な単眼カメラで撮影した身体の一部や特殊な姿勢をAIが分析し、トンネル坑内の暗い環境下でも0.1秒間隔で作業員の存在を検知する。さらに、AIは、現場の状況や環境条件に応じて、各カメラの人物検知レベルを細かく設定できるため、現場の要望に応じた安全管理が実現する。
今後、鴻池組は、新システムを山岳トンネル工事で使用する建機だけでなく、クレーンやフォークリフトなど多様な汎用建機に取り付けていく。
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