山岳トンネル工事で技能者不足を解決、前田建設が開発した防水シートの自動溶着工法:山岳トンネル工事
前田建設工業は、山岳トンネル工事の防水シートを自動溶着させる新工法「FILM用防水シート自動溶着システム」を開発した。
前田建設工業は2021年1月、岐阜工業とケー・エフ・シーの協力により、背面平滑型トンネルライニング工法(FILM)で防水シート継目の溶着が容易になる「FILM用防水シート自動溶着システム」を実用化させたと公表した。背面平滑型トンネルライニング工法とは、覆工コンクリート背面を滑らかなトンネル形状に仕上げ、防水シートを全面接着する工法。
技能習得中の作業員でも高品質の溶着が可能に
新開発のFILM用防水シート自動溶着システムは、FILM用台車に設置した走行用レールや自走式溶着機、牽引(けんいん)用バランサーで構成している。トンネル形状に加工された走行レールに沿って溶着機が移動できることから、隣り合う防水シートをトンネル内空形状に沿った適切な重なり具合で溶着することができる。溶着機の自動走行は、溶着機ローラー部の動力を利用するとともに、牽引用バランサーで溶着機を支持することでスムーズに走行する。
従来施工では、専用作業台車の上下に配置した3人の作業員が、狭い台車内で1つの溶着機を順次手渡ししながら移動して溶着していたが、新工法を導入することで、溶着不良の発生リスクが大幅に軽減し、品質が向上すると同時に、狭い空間で複数の作業者を必要とする苦渋作業から、自走する溶着機を1人で操作する負担の軽い軽微な作業に置き換えることが実現する。
また、熟練工の高い技量に依存し、トンネル形状に合わせて溶着機を操作していた課題についても、技能習得中の作業員でもトンネル形状に沿った安定した高品質の溶着が可能となり、技能者不足の対応策にもなり得る。
前田建設工業は、FILM用防水シート自動溶着システムを北海道新幹線の内浦トンネル(静狩)他工事に適用した。今後は、他現場への展開とともに、FILM技術を核とした防水工の自動化技術の開発を進めていくとしている。
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