穿孔作業の遠隔化と発破パターンの最適化を実現する新システム、安藤ハザマ:山岳トンネル工事
安藤ハザマは、山岳トンネル工事で、穿孔作業の遠隔化と発破パターンの最適化が行えるシステムを開発した。同社では、今回の開発で培ったノウハウなどを生かし、装薬作業やロックボルト打設の遠隔化と自動化の技術開発を進めていく。
安藤ハザマは、山岳トンネル工事の生産性向上を目的に開発を進める「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM)」に関する取り組みの一環として、中央制御室から穿孔作業を遠隔操作する「穿孔作業の集中管理システム」を開発した。
余掘り量や火薬量の削減にも効果
新システムは、マシンガイダンス機能付きドリルジャンボを活用して取得した施工データを分析し、発破作業を効率化する。具体的には、トンネル坑内に設置した中央制御室に装薬孔の穿孔位置や掘削出来形、地質情報などの施工データを集約し、各データを基に地山状況に応じた最適な発破パターンを算出する。
また、中央制御室からマシンガイダンス機能付きドリルジャンボを遠隔操作し、新システムが導き出した発破パターンに基づく忠実な穿孔を行うことで、施工データを確実にフィードバックさせた発破作業を実現する。中央制御室は、発破の影響を踏まえ、切羽(きりは)後方約200メートルの位置に配置し、防じん仕様にすることで、快適な作業環境を確保する。
既に安藤ハザマは、岡山県の浅口市鴨方町六条院東から六条院中地までの区間で、2019年3月12日から2021年3月31日まで手掛ける「玉島笠岡道路六条院トンネル工事」に新システムを適用している。六条院トンネル工事では当初、掘削区間の全線で硬質な花崗岩の出現が想定されていたため、発破作業の効率化が大きな課題となっていた。
解決策として新システムを採用。安藤ハザマは、新システムを用いて、発破作業の見直しを繰り返し行い、発破を円滑に進められるようにし、工事全体の生産性向上を図っている。
新システムの導入効果としては、発破パターンの最適化が、余掘り量や火薬量の削減につながることが判明している。さらに、中央制御室からのドリルジャンボ遠隔操作は、切羽近傍での業務を無くし、安全性を高めるとともに、粉じんや騒音、高温環境下での作業量を削減することが明らかになっている。
現在、安藤ハザマでは、六条院トンネルで新システムを運用しつつ、カメラや通信設備などの性能を確かめ、遠隔作業による施工性や安全性向上に関するさまざまな評価を進めている。
今後、安藤ハザマは、今回の開発成果を基に、装薬作業やロックボルト打設といった作業の遠隔化や自動化の技術開発を推進し、将来的には、山岳トンネル施工を中央制御室から一元管理することを目指す。
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