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BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.2BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(14)(5/5 ページ)

2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は前回に続き、大和ハウス工業の連携事業について、設計段階での具体的な手法を解説していく。

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施工技術コンサルタントについて

 今回、施工技術コンサルタントは、工事を担当するフジタに担当を付けてもらった。役割としては、S3段階のデザインレビューに参加し、納まりの確認や施工上の留意点を設計にフィードバックすることや仮設計画や工程計画などで、検討を加えていただいた。


共通データ環境を使った施工技術コンサルタントによる仮設計画の検討

 設計の段階で、施工性を考えた検討が必要であるのは間違いないが、今回はそれほど難易度が高い物件ではなかったので、このクラスのプロジェクトで施工技術コンサルタントが必須なのかは疑問が残る。しかしながら、規模が大きく難易度の高い物件については、必要な役割であろう。

設計段階での施工図の作成について

 今回、採用した標準ワークフロー5では、実施設計段階から施工図を作るということになっている。だが、現実には、実施設計図が完成した上で、工事業者選定のための入札を執行することを考慮すると、工事業者が施工図を書くこはできないので、施工図を設計段階から作成することは非現実的だ。

 ただ、当社においては、設計のBIMモデルを用いて、施工図を作成する仕組みを作っているので、ルールに基づいて、実施設計図を完成させることが、結果的に施工図のフロントローディング、つまり、設計段階から施工図の作成に入っていると考えてよいと判断した。もちろん、このルールはBIM標準を共有できているフジタだから実現できたことである。こういったBIM標準の業界統一化ができれば、他社とも同様のワークフローで進めることができるようになるだろう。この点については、次回に説明する。

 今回は主に設計段階での取り組みについて具体的に説明を加えた。仮想物件とはいえ、実務と同じレベルの作業を行っているので、BIM業務の改善点について、さまざまな知見を得ることができたのが大きな収穫だった。

 次回は、設計〜生産・施工の連携のあり方と、工事における取り組みについて述べてゆく。

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 技術統括本部 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年9月現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

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