BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.1:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(13)(1/5 ページ)
2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は、大和ハウス工業の連携事業について、先般開催した報告会の発表よりも、少し詳しい説明を加える。
テーマ選定の理由
まず、建築BIM推進会議との連携を前提としたモデル事業※1に、大和ハウス工業が応募するためのプロジェクト策定にあたり、建設デジタル推進部では、設計・施工などのプロセス横断には、「共通データ環境(CDE)」の活用が肝になると考えた。そこで、テーマを「プロセス横断型試行プロジェクトにおける共通データ環境の構築と検証」とした。
共通データ環境とは、ISOによれば、「管理されたプロセスを通じて各情報コンテナを収集、任意のプロジェクトまたは、資産のための合意された情報源」であり、設計・施工の業務で必要となる情報のセット(情報コンテナ)を関係者が協働で生産し活用するための仕組みを意味する。
※1 国土交通省「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」公示
当社は、共通データ環境(CDE)としてAutodeskのBIM 360を採用した。結果的には、新型コロナウイルス感染症の拡大によって全員がテレワークとなり、実際に集まっての作業や会議ができない状態では、BIM 360による共通データ環境(CDE)がなければ、今回のようなBIMは実施できなかったであろう。
また、具体的な取り組みとして、「建築BIMの将来像と工程表」のなかで、「将来BIMが担うと考えられる役割・機能」に記載されている、Process・DataBase・Platformについても検証を行った。Platformについては、「IoTやAIとの連携に向けたプラットフォーム」と記されているが、大和ハウス工業ではBIMによる協働作業を実施するための共通技術基盤として、共通データ環境(CDE)をPlatformと捉えたので、多少意味合いは異なる。Processについては、部門間連携などの情報マネジメントとし、Data Baseは維持管理システムをデータベースと位置付けて活用を検討した。
今回は、建築BIM推進会議のガイドラインに沿った取り組みを要求されたが、自社内でのBIM展開にある課題解決の方法としては、この試行で得た知見を社内展開することこそが、真の目的だった。
BIMガイドラインの「標準ワークフロー」とは?
今回のプロジェクトで適用しなければならない「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以下、BIMガイドライン)の中心的な部分は、ここで定義されている「標準ワークフロー」だと考えている。
標準ワークフローは、プロセス間の連携レベルに応じて、さまざまなパターンが想定されるということだが、パターン1が設計・施工段階のみの連携で、維持管理段階での連携は想定されていないだけで、2〜5のパターンは全て、設計・施工・維持管理段階への連携を意図したものである。現実的に、設計・施工から維持管理段階への連携が通常の業務で当たり前に行われているという事例はあまり聞いたことがないが、モデル事業・連携事業の取り組みでも、多くの維持管理段階での連携が発表されている。
2〜5のパターンの違いは、施工技術コンサルティングの契約と役割の違いであり、下記の図のように10種類のパターンに分類される。
今回、取り組んだのは、BIMガイドラインの標準ワークフローパターン5に当たる。
パターン5を選んだ理由は、今回の規模の物件では事業コンサルタントが入る場合が少ないこととに加え、本来であれば施工技術コンサルタントが、設計の初期段階から関与することが理想だが現実には難しいことから、設計の途中段階から関与すると想定したためだ。施工図のフロントローディングについての考え方は、次回以降に解説を譲る。
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