BIMをiPadで“見える化”する現場特化のアプリ登場、設備ベンチャーが自社開発:第5回 住宅・ビル・施設 Week
2020年4月に設立した空観エンジニアリングは、現場での閲覧に特化したBIMモデル用のアプリ「空観ビューワー」を開発した。BIMモデルをiPad上で表示することで、手戻り防止や現場での情報共有、トラブルへ即対応などが可能になる。
空観エンジニアリングは、あらゆる建築物を対象に関連する資機材・サービスが集結した建築総合展「第5回 住宅・ビル・施設 Week」(会期:2020年12月2〜4日、東京ビッグサイト)内の「第5回 スマートビルディング EXPO」に出展し、BIMモデルをiPad上に表示する専用アプリ「空観ビューワー」のデモンストレーションを行った。
「見えない空間を観る」ために開発されたアプリ
ここ数年、国が後押ししていることもあり、BIM活用の場は設計から施工へと広がってきてはいるが、建設現場となると、まだ施工前の干渉チェックにとどまっていることが少なくない。空観エンジニアリングが開発した空観ビューワーは、肉眼で見ることのできない建物内部の配管や電気ラックを現場のiPadで3D表示することで、施工ミスの防止や工数削減などがもたらされる。
具体的な導入メリットとしては、既存設備との干渉の早期発見をはじめ、3次元モデルのため経験の浅い現場監督でも短時間での現場把握や情報共有、他工種のモデルも突き合わせることで、現場作業員同士での細かな調整が可能になるなどが挙げられる。さらに保守管理でも、配管からの漏水といったトラブルの際には、対象設備をその場で速やかに特定することも期待される。
空観ビューワーに対応しているBIMモデルは、BIMの国際標準フォーマットIFC形式。クラウド上のファイルサーバにIFCデータをアップロードすると、空観ビューワー用のファイルに自動変換し、App Storeからダウンロードできる専用アプリで読み込んで表示する。IFCファイル以外については、3Dモデルを適切なサイズに分割して自動変換する追加サービスも別途で用意されている。
アプリ上では、BIMモデル内を前後左右に動かせる「ウォークスルー」やiPad自体を現場でかざした向きにモデルが追従して回転する「自動スクロール」、見上げるまたは見下げる「視点高さ変更」などの操作が行える。表示機能では、レイヤーごとの表示/非表示/透過表示、サイズや高さ、材質などの属性表示、2次元図面や機器類の仕様書などをモデル内の該当機器にリンクさせて空観ビューワーから参照することも可能だ。
また、閲覧だけではなく、いま表示しているBIMモデルを画面キャプチャーで画像化し、タッチペンでコメントを記入することにも対応している。仮に修正箇所が見つかったとしても、その都度、修正するために事務所に戻ることなく、その場でメールで指示を出せるようにもなる。
空間ビューワーの利用料金は、クラウドでのIFCからの自動変換を含め、1ユーザー月額約3000円を想定している。その他、要望に応じて通り芯や建築平面図の表示ができるようなデータ処理も含めたIFC形式への変換をはじめ、建築・構造・空調衛生・電気・生産設備とバラバラに渡されるBIMモデルの統合、BIMモデルそのものが機器メーカーから提供が無い場合に2次元図面からBIMモデルの作成など、各種サービスが別料金で提供される。
ブースで代表取締役 都築寛志氏は、「もともと前の会社では、空気調和設備や給排水衛生設備、用役設備の設計及び設計監理を行っていたが、そのとき3DCADを現場で見れる日本語仕様のアプリやソフトが無かった。現場でBIMモデルを手軽に閲覧できれば、無駄な工数の削減など生産性向上につながるとの思いで自社開発し、会社設立と同時期の2020年4月にリリースした」とこれまでの経緯を語った。
今後の展開については、「展示会での意見などを参考にしながら、バージョンアップを図っていく。将来は工事だけでなく、メンテナンス分野や施主にも使ってもらえるようにユーザーを拡大していきたい」とコメントした。
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