【新連載】木質材料の変化と多様性:製材からエンジニアードウッドの発展の歴史を振り返る:木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(1)(3/3 ページ)
本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第1回となる今回は、多種多様な木質材料の変遷を振り返る。
4.その他の木質系面材
大きな面材料を得たいという社会的需要は大きく、合板の他にもさまざな木質系面材が開発されました。例えば、木をチップ化して、再度固めた「配向性ストランドボード(oriented strand board:OSB)」や木材の小片を接着剤と混合し熱圧成型した木質ボード「パーティクルボード」の他、繊維まで加工して、接着剤を用いて再度固めて作られる成型板「中密度繊維板※4(Medium-density fiberboard、MDF)」「インシュレーションボード※5」「ハードボード※6」といった材料群です。
※4 中密度繊維板:木材などの植物繊維を原料とし、ドライプロセスによって製造される繊維板のうち、密度が1立方センチあたり0.35グラム以上のもの
※5 インシュレーションボード:木材などを繊維状にしたものを主原料として板状に成形されたもので、密度が1立方センチあたり0.35グラム未満のものとシージングボードが対象となる
※6 ハードボード:木材などを繊維状にしたものを主原料として板状に成形された繊維板で、密度が1立方センチあたり0.8グラム以上のもの
これらの面材は、木材の使用率やその密度、配向特性などにより、特性が変わるため、適材適所で活用されています。加えて、端材や合板の剥き芯などの残材を用いて製造する事が可能なので、歩留まりという観点から優れていると言えます。
5.CLT
近年、用途が広がっているCLT(Cross Laminated Timber)という素材は、この合板と集成材の性質を併せ持ったエンジニアードウッドです。ラミナを直交方向に接着していくことで、非常に幅が広く、長い木の板を生み出すことができます(図5)。1995年頃にオーストリアを中心に工業化され、発展してきました。日本においては、2016年にはスギの、2019年にヒノキやカラマツなどの基準強度が定められ、中大規模の建築に対して適用の期待が高まっており、普及の過程にある材料です。
まとめ
このように、現在では接着剤を用いたさまざまなエンジニアードウッドが生み出されて使われています。そして、素材の基本形態が変わることで、そこから作られる建築もまた変わってきました。
次回は、これらの木質材料が備える特性の観点から、木造構法の変化や発展、そして可能性について、私がこれまで設計した作品例と、現代の建築事例を交えつつ考えていきたいと思います。
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