【新連載】木質材料の変化と多様性:製材からエンジニアードウッドの発展の歴史を振り返る:木の未来と可能性 ―素材・構法の発展と文化―(1)(2/3 ページ)
本連載では、一級建築士事務所 鍋野友哉アトリエ/TMYAを主宰する一級建築士の鍋野友哉氏が、近年環境に優しいなどの理由で関心を集める木材にスポットライトを当て、国内と世界における木造建築の歴史や最新の木造建築事例、木材を用いた構法などを紹介する。連載第1回となる今回は、多種多様な木質材料の変遷を振り返る。
2.合板
前述の通り、樹木は縦方向に成長するという特性から、板材、とくに幅の広い板材は丸太から取り出すことが難しく、昔は非常に貴重なもので、板幅が広い板材を得るためには、それだけ大きく樹齢の長い木が必要でした。
しかし、接着剤の開発が進んだことで、かつら剥(む)きに加工された木「ベニヤ」を直交方向に接着剤で貼り合わせる方法で作成した合板「プライウッド」(図2)と呼ばれる面材が考案されました。合板の発明によって、安価に大量の板材を作り出せるようになり、均一な面材を安定的に供給することが可能になりました。
この合板は後に述べる集成材と併せてエンジニアードウッド※2の代表格です。合板が生まれることで、木造建築の可能性は大きく広がりました。米国においては、いち早く合板を住宅建築に取り入れ、ツーバイフォー工法を構築しました。日本では1981年に、合板張り耐力壁の基準が政府により制定されることで、ようやく一般的な住宅に普及の道が示されました。ただし、昭和初期に流通した合板は接着剤の性能が悪く、それによって合板=低品質というイメージが長らく払拭(ふっしょく)されない事態が続きました。
※2 エンジニアードウッド:木材を加工したものを接着剤などを使用して固形化したものやその2次加工製品のうち、強度特性が計算や評価、保証された製品
3.集成材、LVL
幅の広い面材と同じく、大きな断面の軸材や非常に長い材料は、調達が非常に難しく貴重な材料でした。とくに大きなスパンが必要な場合、長い梁材が必要になってました。そこで木を継ぐ多様な継ぎ手が開発され、その技術が発展してきました。
しかし、継ぎ手を用いると、どうしてもそこが強度的に弱くなってしまうため、一体となった材料が望まれました。そこで、接着剤を用いて小さな断面の木材をつなぐことで、大断面でかつ長い材料を作り出す方法が考案されました。それが集成材(図3)です。集成材は1930年代の米国で製造が開始され、米ウィスコンシン州には当時の集成材を用いて建てられた図書館が現存しています。日本では1950年代に集成材の製造がスタートしました。
さらに、ベニヤの繊維方向をそろえて接着して作成する「単板積層材(Laminated Veneer Lumber:LVL)※3」(図4)といったエンジニアードウッドもほぼ同時期に考案されました。
※3 単板積層材:約4ミリの厚さに加工した木材を乾燥させて、積層と圧着して製造する建材で、木材の乾燥による収縮や反り、割れなどの変化が起きにくい
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