ハイブリッド耐火集成材や唐松湾曲構造用集成材の活用事例、齋藤木材工業:住宅ビジネスフェア2020(2/2 ページ)
齋藤木材工業は、1957年に法人組織に改組し、建築土木資材の製材を開始して以降、信州唐松材を使用した集成材「唐松構造用大断面集成材」の製造や鋼材と耐火集成材を組み合わせた「ハイブリッド耐火集成材」の開発、湾曲構造用集成材の量産化技術開発などを達成しており、国産材の活用に貢献している。
短納期で424本の唐松湾曲構造用集成材を製造
2005年には、石川県金沢市のエムビル・美術デザイン研究所ルネッサンスの建設で、同社が開発したハイブリッド耐火集成材「梁(はり)ハイブリッド耐火集成材」と「柱ハイブリッド耐火集成材」を導入した。
「梁ハイブリッド耐火集成材は、耐火集成材の内部に平鋼を取り付けており、鋼材に熱が伝わりにくい構造で、柱ハイブリッド耐火集成材は角鋼を耐火集成材で包むように設置し、耐火性能を高めている」(齋藤氏)。
2012年には、埼玉県のポラテック 本社ビル ウッドスクエアにおける建設で、同社が開発した「H鋼内蔵型のハイブリッド耐火集成材」が材積で530立方メートル採用された。2014年には、同社が耐火集成材の製造技術を提供し、竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド」が、横浜市の4階建て商業施設の建設で初導入された。
燃エンウッドは、木材による「荷重支持部」、石こう系SL材と木で構成された「燃え止まり層」、木材を用いた「燃え代層(しろそう)」の3層で構成される耐火構造の木造集成材で、柱や梁といった構造部材として使え、2時間の耐火性能を備えている。
2016年に、齋藤木材工業は、東京都江東区のスポーツ施設「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」における建設で、建物の内装材に使用する波型の「唐松湾曲構造用集成材」を424本導入した。
齋藤氏は、「当社は、短納期で424本の唐松湾曲構造用集成材を製造するために同集成材の量産化技術を開発した。通常、湾曲構造用集成材は、レゾール型フェノール樹脂を接着剤として使用し、アール材を型枠にはめて作成するが、1日あたり1〜2本しか湾曲構造用集成材を作成できなかった。当社が開発した量産化技術は、サイズや仕様が均一の湾曲構造用集成材を1日あたり8本製造できる」と語った。
最後に、齋藤氏は、非住宅の木造化・木質化における課題について、「現状、耐火集成材は、規格が存在せず、全て特注品として製造しているため、価格が高くなっている。また、大きな需要が無く大規模な投資を行えない他、耐火集成材の価格を抑える目的で、原材料の丸太を高く購入できず、安定的に確保することが難しい。今後、非住宅の木造化・木質化を推進するためには、原材料の調達から施設への導入まで一貫した取り組みを業界全体で進める必要がある」とコメントした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「デジファブで建築の民主化を」VUILD秋吉代表が拓く建築ファブの夜明け【後編】──“コンピュテーショナルデザイン”との融合
DIYの下地が無い日本でも欧米に遅れること、都市の中で市民誰もがモノづくりを行える工房「FabLab(ファブラボ)」が各地に開設されてから数年が経つ。建築の領域では、マテリアルを切削や積層して形づくる3Dプリンタが、ゼネコンを中心に研究されているが、業界の裾野まで浸透するには、海外とは異なり法令規制など幾多の課題が立ち塞がっているため、まだ時間を要するだろう。しかし、デジファブによって、建築の産業構造そのものを脱構築し、建築モノづくりの手を市井の人に取り戻そうとする意欲的な建築家 秋吉浩気氏が現れた。 - 大建工業が地産材の活用ニーズに応えた不燃壁材と不燃ルーバーを発売
大建工業は、公共・商業建築の市場に向け、天然木突板を表面材に用いた不燃壁材「グラビオUS」と不燃ルーバー「グラビオルーバーUS」を開発した。両製品は、表面材の天然木突板に、地域産材を使えるため、「公共建築物等木材利用促進法」の施行以降、自治体で高まる地産材の活用ニーズに応えられる。 - 三井不動産と竹中工務店が東京・日本橋で高さ70mの木造オフィスビルを開発
三井不動産と竹中工務店は、東京都中央区日本橋本町で、木造地上17階建て、高さ70メートルのオフィスビルを開発する。今回のプロジェクトでは、木造高層賃貸オフィスビルを建設することで、都心で働くワーカーや来館者、周辺の住人に木造ならではのぬくもりと安らぎを与え、都心での街づくりの新たな価値創造や景観を生み出す魅力あふれる場の構築を目指す。 - 公共建築物の木造化率が90%超え、木材利用促進法の施行以降で最高値を記録
国土交通省と農林水産省は、木材利用促進法に基づき、公共建築物の木造化や木質化を推進している。 - 竹中工務店の最新木造・耐火技術を結集した12階建てRC+木造建築が竣工
竹中工務店は、戦後すぐに植林された人工林が伐採適齢期を迎えている状況を受け、積極的に木造建造物の開発を推進し、耐火や剛性に優れた木製部材や技術の開発にも注力している。 - 中京圏初となる木造とRC造を組み合わせた木質耐火構造の中層マンションを建設、清水建設
自治体による「公共建築物など木材利用促進法」の運用強化などを背景に、今後、仕上げ材や構造体に木材を用いる建築物の増加が見込まれるという。このため、大手建設各社は現在、中・大規模における耐火建築の構造体に適用することを想定した木質耐火部材の開発を競っている。こういった市場の状況を踏まえて、清水建設は中・大規模の耐火建築の発注者に対して木質構造の採用を提案している。 - 晴海に隈研吾氏が監修した「CLTパビリオン」が誕生、1年後には産地の真庭市へ移築
東京都中央区晴海に国産材活用のシンボルとなるパビリオンが誕生した。CLTを680立方メートル使用した木の現しが特徴的な建物は、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修したもので、これまでCLTの一般的な用途だった壁や床ではなく、梁として使用されている。解体後に移設・再築が可能な構造で設計されており、1年間の運用後には、木材が生産された岡山県真庭市で建築物として第2の人生を送るという。 - 23.5カ月の超短工期で「有明体操競技場」完成、木材使用は五輪施設で最多
2020年東京五輪の体操競技などが行われる東京・江東区で建設が進められていた「有明体操競技場」が完成した。新競技場は大屋根や外装などで、東京五輪の開催に伴い新設された施設のうち、最も多くの木材が使用されたという。