ヘルメット内部で「深部体温」を予測 作業の邪魔にならず精度も高い熱中症センサー:メンテナンス・レジリエンス2026
谷沢製作所は、ヘルメット内に取り付けて深部体温の上昇を推定するセンサー「熱SEE」を販売している。作業時に必ず装着するヘルメット内に取り付けることで、「付け忘れ」を防止し、作業の邪魔にもならない。熱中症の危険がある時は、振動で使用者へ確実に伝える。
ここ数年、夏の気温上昇が工事現場の労働環境を大きく様変わりさせ、熱中症対策が安全管理の最重要課題となっている。暑さから労働者の安全と健康を守るには、作業者の身体情報を的確に把握する必要がある。しかし、従来の腕時計型のデバイスでは、装着の手間や作業中の破損リスクが課題となっていた。
「熱SEE(ネッシー)」は、ヘルメットメーカーの谷沢製作所が「メンテナンス・レジリエンス2026」(会期:2026年7月15〜17日、東京ビッグサイト)の構成展の1つ「猛暑対策展」で展示した熱中センサーだ。ヘルメットの内部に取り付けることで、作業者の視界に入らず、動きの邪魔にもならない。深部体温に近い前頭部で計測するため、作業者の深部体温を精度よく推定できる。
アラートは「振動のみ」、周囲に考慮したシンプル設計
熱SEEは、使い慣れたヘルメットの内部に取り付けるだけですぐに使える。その手軽さは、ヘルメットメーカーとしての知見を結集し、現場をよく知る利用者ファーストの視点で開発した製品だからこそ実現した。
取り付け位置は、ヘルメットの前頭部で、額部分から得られる外気温と皮膚表面温度をもとに、独自のアルゴリズムが装着者の深部体温を予測/推定する。装着者の体温が危険なレベルへ上昇していくと判断した場合は、本体が振動(バイブレーション)して作業者本人にアラートを出す。アラート音は鳴らず、振動のみで伝えるため、騒音の多い現場でも作業者本人にだけ確実に危険の予兆を知らせる。
ヘルメット内に装着するデバイスにはスイッチがあり、現場導入時に1回押すだけで最大6カ月間、電池交換なしで動作し続ける。毎日の電源オン/オフや終業後の充電といった手間は一切不要だ。毎日のスイッチ操作が要らないため、電源の入れ忘れの心配がない。
熱SEEが6カ月もの長期間使えるのは、電波を外部に発信しないスタンドアロン設計のためだ。腕時計型デバイスのように充電や通信インフラの整備を必要とせず、シンプルに長時間使える。
頭部装着だから壊れない、作業を妨げない使い勝手の良さ
現場でのウェアラブルデバイスの大きな課題が「破損リスク」だ。腕や手首に装着するタイプは、資材運搬や狭所作業の際に周囲の構造物にぶつけて壊してしまうトラブルが起きやすい。その点、ヘルメット内に装着する熱SEEは、被ってしまえば手元からは離れるため、作業中に何かを直接ぶつけて壊してしまう心配がほとんどない。
また、外部ネットワークと接続しない独立型のため、地下や山間部、シールド内などの電波が届かない閉鎖空間でも問題なく動作する。
蓄積データから「分析報告書」を作成、翌年の安全対策をデータで裏付ける
熱SEEは単なる警告機にとどまらない。管理者にとっての最大のメリットは、センサー内に蓄積されたデータを用いた「分析報告書(レポート)」の作成サービスだ。
最大6カ月の電池寿命を迎えた熱SEEを谷沢製作所が指定する場所へ送付すると、専用システムでデータを読み出し、報告書を作成するサービスを提供している。報告書には、現場全体でのアラート発生件数やその推移、さらに「1日の中でアラートが多発した時間帯」などをグラフ化して提示する。可視化された分析結果は、翌年の対策立案のための貴重な「反省材料」となる。
「7月の11時台にアラートが集中している」といった具体的な傾向が分かれば、「その時間帯の直前に休憩を増やす」「冷風機を増設する」といった効果的な熱中症対策を講じられる。
報告書作成のサービスは、4月に使用を開始して6月時点でデータが必要な場合など、満期前でも、その時点までのデータを抽出してレポートにまとめることにも対応する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
DX対応型、多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発 大成建設
大成建設は、トンネル坑内作業向けのDX対応型次世代多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発した。個別空調や後方視認、双方向通信などの複数機能を集約し、トンネル坑内作業の安全性や快適性、作業性を向上させる。
「作業者安全モニタリングシステム」用センサーデバイスを小型軽量化、戸田建設
戸田建設は、村田製作所と協業し、2019年5月に発売した「作業者安全モニタリングシステム」用センサーデバイスをモデルチェンジし、小型軽量化を達成した新モデルを2022年6月に販売開始した。
AIで30分〜1時間先の熱中症リスクを予測、福岡市の建設現場で実証
BeeInventorは、福岡市内の建設現場でAI熱中症予測システム「DasSenseH」の実証を開始した。作業員の身体データや現場のWBGTなどをAIで解析し、熱中症リスクの予兆検知とリアルタイム通知の有効性を検証する。
ヘルメットに後付け、作業員のバイタルデータと転倒/転落情報を一元管理
Momoは、後付け型のヘルメットセンシングシステム「ヘルメットPalette」の販売を開始した。既存製品の「バイタルPalette」と連携することで、作業員のバイタルデータに加え、転倒や転落のリスクをリアルタイムで検知する。
水分摂取と深部体温の上昇に着目した熱中症予防システムを現場検証、東急建設
東急建設は、建設現場の熱中症災害ゼロを目指し、技能労働者の水分摂取量や摂取回数と、深部体温の上昇に着眼した熱中症予防システムを開発し、2022年夏に首都圏と九州の作業所で有効性の検証を行った。なお、同社ではこれまで、「バイタルサイン」を検証し、熱中症を未然に防ぐ能動的予防技術の開発に取り組んできた。その経験から、従来の単一要素ではなく、複数要素を組み合わせた予防が有効だとの結論に至り、なかでも対策効果が期待できる水分摂取と深部体温に着目し、今回の検証を実施した。
“測る”の先にある価値を創造、現場の安全を守るソーキの各種計測システム
「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2022」で、計測機器のレンタル企業ソーキは、「測るの先に何があるのか、何をしたいのかを一歩先に進めたい」をコンセプトに、複数のサービスを紹介した。
充電不要の“熱中症警告”バンド、キーエンス系新会社が開発
2025年6月以降、暑さ指数28度以上、または気温31度以上で、連続1時間以上または1日当たり4時間を超えて作業が発生する事業者に対し、作業者の異変に「気づく仕組み」を用意する義務が必要となった。その対策としてメイカーズは、充電不要でワンシーズン稼働する超薄型熱中症対策バンドを提案する。



