日建設計、AIと人や社外との「共創」掲げる新5カ年計画 ソフトバンクとの合弁で来春ビルOS提供:建設業の新経営計画(3/3 ページ)
日建設計は、2030年に売上高990億円を目指す、新たな5カ年経営計画を策定した。新しい経営ビジョンでは「共創」を軸に、社内ではAIとの共創による建築生産システムの構築、対外的には共創施設「PYNT」を活用した他社との協業など、「社会環境デザインのプラットフォーム」企業を目指す方針を打ち出した。その成果の1つとして、ソフトバンクと共同設立した新会社が、2026年3月から次世代のスマートビル普及に向けたビルOSを提供する。
オフィスの脱炭素化と社員教育も強化
ビジネス基盤の革新では、クラウドサービスを積極的に導入する。現場や各業務で合理化とスピードアップを進め、クライアントへの価値提供を強化し、職員のスキル向上にも注力する。
既に東京オフィスでは、照明のLED化と日建設計が開発した環境行動を促すスマホアプリ「Asapp(アサップ)」を採り入れ、2024年度は2010年度比で27%の脱炭素化を果たした。大阪、九州、名古屋の各オフィスと、2025年12月末に竣工したばかりの北海道オフィスでも脱炭素に取り組んでいる。
今後はさらに、日本国外の法人の自律化や現地資本の充実、海外企業との連携など、グローバルでのビジネス基盤の強化も視野に入れる。中国、アジア、中東にも商圏を広げ、20海外グループ会社の2025年売上30億円からのさらなる業容拡大を見据える。
組織体制では2025年比で約400人増となる3100人にまで社員を増やす。社員教育に関して大松氏は、「人材不足の今、OJTだけでは企業文化の発展は難しい」と指摘。ワークショップなどを通じた相互理解や柔軟な働き方、研修制度の充実により、「個と組織の成長のスパイラルアップを図る」と展望を語った。
経営指標ではインフレターゲット政策を前提に、2030年の受託額(受注高)は2025年度比で328億円増の1050億円、収益(売上高)は300億円増の990億円を設定した。ただし、大松氏は注釈として「数値目標の必達よりも、“共創の強化”を重視する」と補足説明を加えた。
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