日建設計、AIと人や社外との「共創」掲げる新5カ年計画 ソフトバンクとの合弁で来春ビルOS提供:建設業の新経営計画(2/3 ページ)
日建設計は、2030年に売上高990億円を目指す、新たな5カ年経営計画を策定した。新しい経営ビジョンでは「共創」を軸に、社内ではAIとの共創による建築生産システムの構築、対外的には共創施設「PYNT」を活用した他社との協業など、「社会環境デザインのプラットフォーム」企業を目指す方針を打ち出した。その成果の1つとして、ソフトバンクと共同設立した新会社が、2026年3月から次世代のスマートビル普及に向けたビルOSを提供する。
PYNTを共創の場に、5カ年で100億円規模を投資
経営ビジョンの達成に向け、具体的な施策として「社会環境デザインの価値向上」「社会問題解決型事業の展開」「ビジネス基盤の革新」「組織体制と経営指標の進化」の4テーマを挙げた。
社会環境デザインの価値向上では、AIと競合するのではなく「共創」による付加価値の創出を目指す。かつてはクライアント、設計者、施工者の3者で完結していた業務も、近年は関係者が増え、プロセスが複雑化している。業務を円滑に進めるには、建築生産プロセスを一括で効率的にマネジメントする環境が不可欠となる。
チェーン店などの決まった建物フォーマットや基準/法に則った定型的な建築設計はAIが得意とする一方、都市計画やアートと融合した空間づくりには人のデザイン力が求められる。大松氏はAIと人の力を融合し、各ステークホルダーが情報を活用しやすい仕組みづくりを進めることで、「国内の建築生産システムを変革したい」と述べた。
社会問題解決型事業の展開では、受託事業の枠を超え、主体的にプロジェクトを提案して実行する。中核となるのが共創スペース「PYNT(ピント)」だ。2023年4月に開設した「PYNT東京」には延べ約2万3000人が訪れ、179件の対話から23件のプロジェクトが実証フェーズへ移行した。2025年11月には第二拠点「PYNT竹橋」もオープンしている。大松氏は「今後も異業種が集まる場としてコラボレーションを続ける」とし、5年間で100億円規模を投資する考えを示した。
PYNT発のプロジェクトとしては、日本政策投資銀行グループと連携し、老朽化した日建ビル1号館をリノベーションで脱炭素化も実現したゼノベプロジェクトがある。
また、2023年にはソフトバンクと次世代のスマートビル普及に向けた新会社「SynapSpark(シナプスパーク)」を設立。その成果として、2026年3月からビルOS「synapsmart(シナプスマート)」の提供を開始する予定だ。ビル設備の通信仕様(プロトコル)の違いを解消し、データをつなげる(Synapse)ことで、エネルギー消費量の可視化などを実現する。
地方創生分野では、2022年にハチハチやロフトワークと共同で「Q0(キューゼロ)」を設立。秋田県にかほ市の牧場を舞台に、出産後に十数年放牧した母牛「放牧経産牛」を生産する畜産農家と、食を含めたサーキュラーエコノミー(循環経済)のプロジェクトなどを進めている。大松氏は、「何度も視察に赴くなかで方向性が少しずつみえてきた。若い世代や活性化に向けた豊富なアイデアは、地方だからこそあるはず」と期待を語った。
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