建設/不動産分野の温室効果ガス「削減貢献量」、算定手法の素案を策定 日建設計:カーボンニュートラル
日建設計は、建設/不動産分野の温室効果ガス削減貢献量の算定方法に関する素案をまとめ、関係省庁や業界関係者に提案した。今後、多様なステークホルダーの意見を反映しながら、業界標準として機能し得るガイドラインへの発展を目指す。
日建設計は2025年6月18日、建設/不動産分野の温室効果ガス(GHG)削減貢献量の算定方法に関する素案をまとめ、関係省庁や業界関係者に提案したと発表した。
素案は、外部有識者や建設/不動産関係者に加え、金融関係者も委員として参画した検討会の成果として取りまとめたもの。建築物(ビル)を対象に、新築や改修によって回避されたGHG排出量を「削減貢献量」として定量化し、建築物を通じた脱炭素への貢献を評価する仕組みを提案した。
従来のスコープ1〜3に基づく排出量計上では、建設時/運用時のCO2排出を抑制した建物でも、建設しなかったとの比較で排出量が増加する。これに対し、抑制したGHG排出量の差分を削減貢献量として表すことで、排出削減の意義が評価できる。
一方、建設/不動産分野では、建物のライフサイクルが長く、所有形態も複雑なため、削減貢献量の算定が複雑でガイドラインの整備が遅れていた。業界統一の評価手法を確立することで、投資を呼び込み、建設/不動産分野の脱炭素化推進を目指す。
2025年度も検討会を継続し、今回の素案に対して多様なステークホルダーの意見を反映しながら、業界標準として機能し得るガイドラインへの発展を目指す。
「日建ビル1号館」、20年間の削減貢献量は約510トン
素案では、定量化の対象をエンボディドカーボン(建設、維持管理、解体段階での排出)とオペレーショナルカーボン(建築物使用に伴う排出)の両方とした。ベースラインは、新築では従来型の不動産、改修では改修を行わずに使用を継続した場合と設定。評価範囲は、新築の場合は不動産の建設/使用段階、改修の場合は改修段階から次の改修の直前までの使用段階とし、解体段階は対象外。評価期間は次の改修までの期間を想定して原則20年とした。
評価方法は、販売用不動産には将来分も含めて完成時に一括で評価する「フォワード ルッキング アプローチ」を、賃貸用不動産には年度ごとの実績を反映できる「イヤー オン イヤー アプローチ」を適用することが望ましいとしている。
算定事例として、日建設計が改修した築57年の「日建ビル1号館」の削減貢献量を示した。このビルでは汎用性の高い技術を組み合わせた改修により「ZEB Ready」認証を取得している。改修工事での低炭素コンクリートや電炉鋼などの採用により、CO2換算でエンボディドカーボンを約760トンに抑制、さらにオペレーショナルカーボンを約1270トン削減。20年間での削減貢献量を約510トンと試算した。
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