生成AIで需要高まるデータセンターのコンサル開始、日建設計やNTT-AEらが“地産地消型DC”提案:BAS
日建設計、ユーラスエナジー、NTTアノードエナジー、リジェネラティブ・インフラストラクチャーは、生成AIで需要が高まるデータセンターを対象としたコンサルティングサービスを開始した。災害リスクを考慮し、北海道や九州を含む敷地選定や事業計画の立案から、建築、設備、エネルギー、情報、運用までワンストップで、次世代の地産地消型データセンター整備を支援する。
日建設計、ユーラスエナジー、NTTアノードエナジーおよびリジェネラティブ・インフラストラクチャーの4社は2025年10月1日、データセンター(以下、DC)を中心としたデジタルインフラの課題解決と再構築に向けた業務提携を締結したと発表した。建築、再生可能エネルギー、通信、インフラ経営と各分野の強みを統合したコンサルティングサービスを共同で提供する。
AI、液冷を用いた高効率DCを目指す
生成AIの普及などにより、社会を支える基盤としてDCを含むデジタルインフラの重要性が急速に高まっている一方で、デジタルインフラを取り巻く課題も顕在化している。DCの電力需要は、エネルギー消費の改善幅が小さい場合、2030年に年間240億kWh(キロワットアワー)、2050年では住宅を除く非住宅建築物の床面積約26億平方メートルが消費するエネルギーの約1.2倍となる5000億kWhにまで急増し、国全体の電力需給に大きな影響を与えることが懸念されている。
また、DCの約85%が東京/大阪圏に集中しているため、南海トラフ地震のような大規模災害時のリスクを抱えている。さらに、既存DCの多くが老朽化しており、エネルギー性能や運用効率の改善余地があるにもかかわらず、抜本的な再整備が進んでいない。
そこでコンサルサービスでは、電力需要の急増や老朽化施設への対応、南海トラフ地震などの災害リスクといった日本のDCが抱える課題に対し、計画から設計、運用までを一貫して支援する。インターコネクションDCからハイパースケールDCまで対応し、施設の分散配置や脱炭素化、リノベーション、省エネ化などを状況に応じて提案する。
現状で東京や大阪に偏在するDCは、再生可能エネルギー活用が可能な北海道や九州を含む4極に分散。地盤や通信ネットワーク、エネルギーなどを鑑みた敷地選定を含め、最適化を支援する。
エネルギー使用量の効率化では、液冷システムやAIの空調制御をなど取り入れ、PUE1.1〜1.2の高効率DCを目指す※。資源エネルギー庁が掲げる2030年度目標の事業者平均PUE1.4以下を上回る値となっている。
※PUE:Power Usage Effectiveness。「DC全体のエネルギー使用量/IT機器のエネルギー使用量」で、DCの省エネルギー性能を表した値
DCのエネルギー効率や災害耐性の向上に加え、地域の農業やコミュニティー施設での冷房排熱活用なども見据え、地産地消型DCを構築する。
また、旧型DCや工場など他用途既存施設の最新DCへのリノベーションにも積極的に取り組み、建設時のエンボディードカーボンを抑制するとともに運用時のオペレーショナルカーボン削減にも貢献する。
今回の業務提携では、日建設計の建築や設備設計の経験と技術力、ユーラスエナジーの再生可能エネルギー分野の実績、NTTアノードエナジーのDC構築と運用、電力調達に関する経験と技術力、リジェネラティブ・インフラストラクチャーのDC事業経営と技術に関する知見、人脈を統合する。4社はデジタルインフラ関連の最新技術、動向についての研究調査も進め、国内外に情報発信する。
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